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zoom RSS 薬害問題と重ねて〜 出産事故の脳性麻痺支援

<<   作成日時 : 2007/12/20 00:00   >>

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僕たちは、限られたお金で誰を救わなければならないのでしょうか?

 脳性麻痺を生じた新生児に対する支援策を報じる朝日新聞の記事です。
  『新制度の救済、年5百〜8百人 出産事故での脳性まひ児』
   朝日新聞 2007.12.19
 (Web魚拓

 脳性麻痺とは、新生児が脳に損傷を負うことにより運動機能に障害が生じる症状です。障害の程度には差があるようですが、一生にわたって障害が残るので、その経済的負担は非常に重たいものであるはずです。
 朝日新聞が報じた内容は、このような脳性麻痺のうち、出産を通じて重度の障害を負った新生児に対して数千万円を給付するという制度案です。
  • 先天性の異常や出産後の感染症で障害を負った新生児には給付しない線引きがある
  • その条件に当てはまらなければ、医師の過失の有無にかかわらず給付する
 対象者は年間500〜800人と見積もられ、全ての脳性麻痺のうちの2〜3割をカバーするそうです。その資金は出産一件あたり3万円の負担となり、健康保険を通じて最終的には国民全体で負担することになるようです。(国民一人あたり年間125円の負担ですね: 給付額[2500万円]×給付対象[650人]÷国民総数[1億3000万人])

◆ ◆ ◆

 この脳性麻痺の支援制度が、薬害肝炎の支援のあり方を考える上でいろいろな問題を提示しているように思われました。

 脳性麻痺は重度であれば、その経済的負担は個人で背負うにはあまりに重い物です。脳性麻痺は誰の身の上にも降りかかりうる不運で、しかもそれは個人の努力では回避できません。その負担を不運に当たった個人が背負うのではなく、社会全体で背負うのは望ましいことだと考えます。
 薬害肝炎の問題は、薬の副作用の問題です。どんな薬にも予期せぬ副作用は潜んでいて、その不運に当たった人が過大な負担を強いられるのは脳性麻痺と同じだと考えます。 薬害のリスクも、社会全体で負担すべき物ではないでしょうか?

 医療機関の過失を証明しなくても救済が受けられるのは評価すべきです。裁判を起こすのは非常に難しく、人生を賭ける覚悟すら要求されます。そのような手続きを経ずに一律の支援を与えるこの制度は評価されるべきです。
 裁判の問題は、今このときに薬害肝炎の被害者の方々が苦しんでいる問題でもあります。訴訟は長きにわたり、そのあいだに亡くなった方もおられます。和解の期限が迫っていますが、被害者が救われる結果が得られるとも限りません。このような裁判の苦しみを経ず、必要な支援が与えられる社会制度を望みます

 この制度が医療従事者を守る点も評価されるべきです。脳性麻痺は1000人に数人は必ず起こる物ですが、その全てが訴訟に発展し法廷で争われたら産科医はたまったものではありません。たとえ裁判に勝っても、証拠を集め弁護士を雇う裁判の負担は一介の医師(医学知識を持っていることをのぞいては一般人と異なりません)には重すぎます。まして、自分が全霊を尽くした医療行為で裁判に負けたらどうでしょう?
 この負担は、医師ではなく、僕たち国民に返ってきます。産科医はなり手がいなくなり出産の安全は保障できなくなります。のこった数少ない産科医は訴訟リスクに見合うだけの手数料を、全ての妊産婦から求めるでしょう。医療費は高騰します。
 このような負の連鎖を、新制度は防ぎます。
 薬害肝炎の問題で、安直に「薬の副作用はどんな例でも必ず行政が悪い」と主張することは、この例と同じように過大な負担ではないでしょうか? 政府の怠慢は確かにありました。しかしそれをかさにかかって、防ぎようがなかった被害まで非難されるのは間違いです。しかし非難の正当性を見極めるのは至難なので、そこを議論せずに被害者が救済される制度が必要です。

 一方で、先天異常や出生後の障害を支援しない線引きは、妥当なのでしょうか? 慎重に議論されるべきです
 脳性麻痺の負担が重いことに変わりはなく、この制度は不公平かもしれません。全員を公平に支援しても国民の負担は年間500円ほどです([年間125円]÷[救済対象2.5割])。過大な負担ではないようにも思われます。
 しかし人々が苦しむ障害は脳性麻痺ばかりではありません。障害者を支える制度はすでに存在するはずですが、限られた財源で十分な支援にはほど遠く、苦しみは大きいことと思います。その中で脳性麻痺だけが特別扱いされることは許されるのでしょうか? それとも僕たちは、脳性麻痺にも知的障害にも脊髄損傷にも自閉症にも、あまねく全ての病苦に年間500円ずつ負担を上積む覚悟があるのでしょうか? さらには、障害者は支援してワーキングプアは放置するのでしょうか?
 薬害肝炎の問題も、同じだと考えます。彼らにはなぜ支援が与えられるべきで、それはなぜ他の苦しむ人たちよりも優先されるべきなのか、僕たちは考えなければなりません

 脳性麻痺の支援で示された智恵が薬害肝炎の救済でも生かされ、来たるべき訴訟の決着が被害者の幸福に寄与する物であることを願います。

◆ ◆ ◆

 最後になりましたが、僕はこの朝日記事を評価したいと思います。制度案を簡潔にまとめつつ重要な情報を提示し、しかもそのような制度の必要性にも触れて僕たちに考える材料を与えてくれたからです。
 このような報道が増えることを望みます。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
私も、この朝日の記事を読みました。

>僕はこの朝日記事を評価したい
同感です!

私の頭のあちらこちらにあって、ずっと気になっているのに、まとめられなかった色々なことが、きちんと文章にまとまっていて、くやしいです。(笑)何度も読ませて頂いて、私なりに考えます。
アイスゆず
2007/12/20 00:12
 タイミングをねらっていたとしか思えないような朝日記事でした(苦笑)
 しばらくたったら同紙の社説のネタになるんだろうなぁと思うと、自分の記事との違いが恐ろしくはありますが。
 なんだか悔しがられてしまいましたが(笑)、アイスゆずさんのご意見も楽しみにしています。出かけていてレスは遅れるかもしれませんが、読んでいますのでご容赦ください。
birds-eye
2007/12/20 00:24

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