問題提起: 医療者の過失と刑罰

医者と市民の間の溝には、こんなものもあると思います。
さて、どうやって埋めたものでしょうか?

 先日の記事で、「医師と刑罰を適用するな」という僕の主張についてkusukusuさんからとても鋭いご指摘をいただきました。それを、今日ご紹介しようと考えていました。
 その矢先、別のところでタイムリーな記事を拝読しました。(後でご紹介します)

 せっかくなので、今回の記事では問題提起をしてみたいと思います。

 幸い、このブログにはいろいろな立場やお考えの方が来ておられます。
 なので、これから提起する問題には賛否両論あると思います。

 でも、理解できないまま物別れに終わるよりは、どのあたりに「見解の相違」があるのか、はっきりさせてみるとおもしろいと思うのです。
 その方が、問題に対する理解が深まり、豊かな議論になると思います。

 なので今回は、僕個人の考えはできるだけ表に出さないように努めたいと思います。

 こちらを読まれる皆さまには、ぜひおつきあいいただければ幸いです。
 当ブログは来訪者同士の議論も歓迎してます。「自由な討論」に憧れる(笑)管理人です。
 場末の弱小ブログ(笑)でマナーの悪い人もいないと思うので、気軽に参加できる雰囲気になるといいなあ、と思ったりします。

 それでは、始めます。

◆ ◆ ◆

 まず、お題は

 「不適切な医療行為があった場合、
  医師に刑事罰を科すべきかどうか?」


 です。

 刑事罰というと、主に業務上過失致死傷罪ですね。
 「行政処分」や「民事訴訟」では不足で、≪犯罪≫として≪刑務所≫に入れなきゃダメなのか?
 という認識でよいかと思います。

 不適切な医療行為については、
   「何」「どこまで」不適切なのか?
 というのを決めないと、議論になりませんね。
 いまはまあ、それを頭の隅に置いておいて、続きを読んでいただければと思います。

◆ ◆ ◆

 さて、それでは僕が最近拝読した、議論のタネに面白そうな記事です。
 (興味深い問題提起を行っている、という意味ですよ)

 医療者のかたが首肯する傍ら、一般の方は「えっ!?」と思われるのではないでしょうか?

 こちら。
  『業務上過失致死を使うべきではない』
   ある町医者の診療日記


 元になったニュースはこちら、
  『麻酔薬を誤って投与、患者が死亡 福岡市の病院』
   朝日新聞 2008.02.27
 (Web魚拓
 「薬と間違えて、麻酔薬を点滴してしまい、患者が死亡した」というものです。

 こちらのブログ記事から、僕の視点からいくつか論点を要約・抜粋させていただきたいと思います。
 (これは偏りを生じるので、ぜひ元記事もお読みください)

 ●まず、「医療ミス」と呼ばれるものには二種類ある
  ①治療方針の選択が、あとから考えて不適切だったもの。
  ②今回のニュースのような、作業のミス

 ●①は法的な意味でのミスではない。
  ②は法的な意味でのミス(過失)だ。

 ●しかし、①はもちろんのこと、②でも医療者に過失致死傷罪が適用されてはならない

 ●事故が起きるのにはシステム的な要因が大きく、個人を罰することでは解決しないから。

 僕の言葉でまとめさせていただきましたが、おおむねこんな所だと思います。

◆ ◆ ◆

 ここで、次はkusukusuさんから、当ブログの記事『不適切な医療行為について、医師の方が考えること』にいただいたコメントを紹介させていただきたいと思います。

 こちらは、当ブログのコメント欄が狭く読みづらいので、そのまま全文をこちらに引用させていただきます。
 要約しようにも削るところがない、充実したご意見です。
言わんとすることはわかりますが、全体に主張が医者よりに偏り過ぎているような気はします。
「医師の診療行為については、刑事責任を追及しない」ということになると、結局、医者は妥当でない医療をしているのに刑事責任を追及されないでいるのではないか?という不信感を人々が抱くことになり、ますます医療と医者に対する不信感をつのらせていき、結果として医者と人々(患者)の間の溝がますます深まっていくことにならないでしょうか?
現状でも医者に対して人々が不信感を抱いている面はあるように思います。それを晴らしていくには、ある程度、きちんと訴訟で戦い、「これは無罪」という例を示すことを積み重ねていくことでしか、成し遂げられないのではないでしょうか?
実際に、医者に責任はなかったのに訴訟になっている場合はあるかもしれませんが、しかしだからこそしっかりと訴訟で「無罪」という判決を勝ち取っていくように努めるしかないように思います。

医者が過度に責任追及されていることがあるからといって、医師の診療行為については、刑事責任を追及しないという制度をもうけたり、医者側からのみ判断できるような制度をもうけたりしても、医者に対する人々の不信感は解消されず、むしろ、ますます増すことになるから悪循環です。

もちろん、人々や患者側が抱いている医者に対する不信感も、見当違いなものであったり誤解であったりすることもあるかとは考えられますが、そうした不信感を解いて行くには、訴訟を含めて、相互が議論、コミュニケーションを重ね、医者が無罪の判決を勝ち取ることを積み重ねていくしかないように僕は思うのです。(理想論すぎるかもしれないけど、訴訟が不毛な戦いではなくコミュニケーションをするきっかけのようなものとして機能するといいと思うのですが。)訴訟自体がなくなったらそうした不信感を解くこともできなくなってしまうのではないでしょうか?


 一般の方の考えを代弁して下さるものとして、とても説得力があるものだと思います。

◆ ◆ ◆

 それでは、このような二つの主張は、どのような点で見解が相違しているのでしょうか?
 そしてそれは、どのように解決されるべきなのでしょうか?

 もちろんさまざまな見方もあるかと思いますが、僕は次のような点がそうだと思いました。
 最後、これを問題提起として投げます。
 皆さまはどうお考えでしょうか?

 ●刑事訴訟の手続きは医療問題の解決に
  有意義だ: 市民の不信感を取り去ることができる。
  有意義でない: 医療現場の根本的な問題を改善しない

 ●医療行為への刑事罰の適用に関して
  「治療方針の選択ミス」にまで適用すべき
  「作業のミス」にだけ適用すべき
  極例外的な事例を除いて、適用すべきでない

 ●刑事訴訟で訴えられても、悪くない医療者は
  守られる: しっかりとし訴訟で「無罪」を勝ち取るよう努めるべき
  守られない

 ●医師を守るためと言って、刑事責任を免除するのは
  行きすぎだ: 医療への不信感を増大させる
  行きすぎでない: 医療問題の根本解決のためには不可欠だ

 ●医師の中での検証など、刑事訴訟でない問題検証は
  有効でない: 市民の不信をぬぐえない
  有効だ:

 ●結局のところ、医療問題の検証に必要な手続きは
  刑事的な追究
  民事的な紛争解決
  裁判制度に頼らない、紛争解決
  医師による自浄制度
  (航空機事故のような)事故調査制度
  その他
   ※複数選択可
   ※現制度を改善して活用するなら、それは?

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