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zoom RSS 薬害肝炎まとめ 9.マスコミ報道の偏り

<<   作成日時 : 2008/02/02 00:10   >>

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「マスコミは、『医療の避けられないリスク』に配慮した報道を行うべきだ」


◆ 薬害肝炎まとめ 目次 ◆

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(追記)
このエントリーは、「科学に責任を持つ市民のブログ」の理念にもとづいて書かれています



 薬害肝炎問題を報じるマスコミの報道は、僕には釈然としないものでした。

 被害者に同情する世論を煽るばかりで、薬害肝炎問題の「避けられなかった被害」という側面があまりに軽視されていたように感じられたからです。

◆ ◆ ◆

 新聞の大手全国紙5紙(朝日、日経、読売、毎日、産経)の記事を、僕は全てチェックしているわけではありません。
 ただ、薬害肝炎問題に関しては、僕の知るかぎりでは次の記事が最も充実していたように思います。(この記事はネットでは公開されませんでしたが、アイスゆずさんがブログ上で紹介してくださいました。それを再転載させていただきます)
被害、長年置き去り
朝日新聞 2008.01.16

 今回の救済対象となったC型肝炎被害者の多くは、80年代に血液製剤を投与された人たちだ。
 薬害エイズ訴訟が和解したのは96年。当時から肝炎被害は知られていた。

「リスク受忍論」

 それなのになぜ、今まで肝炎被害は「置き去り」にされたのか。
 一つには、「治療で命が助かったのだから、多少の副作用は仕方ない」という「リスク受忍論」が、広く医療関係者の間に存在していたことがある。特に肝炎は、かつて輸血を受けた患者の多くが発症していた。医薬行政をつかさどる国の意識も例外でなかった。

 さらにエイズは当初、「死に至る病」だったことがある。治療法が格段に進んだいまとは異なり、感染が「死」に直結した。血友病患者が治療によって命を奪われたと訴える姿に、世論や政治は動いた。
 では肝炎は死に至る病ではなかったのか。
 いつから、C型肝炎が肝がんなどに進行する危険な病気と認識されるようになったのかは議論がある。だが、遅くとも90年代には危険性が認識されたとみられることが、02年に日本産婦人科医会が国に提出した文書から読み取れる。
 B型肝炎でも急性症状が治まった後、予後の良い人がいる一方で、肝がんなどに進む人がいることが知られていた。
 日本と同様に80年代に薬害エイズを体験した欧米では、血友病患者らのエイズ被害がわかると、それ以前から問題になっていた肝炎にすぐに目を向け、対策をとった。

対策遅れた日本

 だが日本では、00年秋に新たな肝炎被害が報道されるまで対策はなかった。01年から輸血経験者などに検査を呼びかけ、住民検診にも取り入れた。国の肝炎対策予算は毎年50億〜80億円程度。治療費助成を求める声も高かったが、約350万人ともされる膨大な感染者数に国は二の足を踏んだ。
 その意味で、世論を喚起したC型肝炎訴訟の功績は大きい。
新年度から政府はインターフェロン治療への医療費助成に乗り出す。治療対象は限られ、7年の時限つきだが、画期的だ。
 とはいえ、製剤投与時期にかかわらず一律に給付金を支払うという救済法による「決着」に問題がないわけではない。
 法に国の責任時期は明示されなかった。「こだわればまとまらない」と与党関係者は話した。
 だが「薬害」を特定して再発防止を図るには、時期の明確化こそが必要だ。「治療の有効性」を「肝炎感染のリスク」が上回ったのはいつか。
だれがいつ、何をすべきだったか。できなかった理由は何か。
 フィブリノゲン製剤では、@肝炎リスクを考えて製剤の適応範囲を限るべきだったか否かAいつ警告を発すべきだったかという争点をめぐり、5地裁の判断は分かれた。
 同製剤が産科医療の現場を中心に安易に使われたことは間違いない。
ただ、地域や時代によって輸血用血液などの確保が困難だった△妊産婦死亡をめぐる医療過誤訴訟では同製剤を使わなかった医師が賠償を命じられた、という事情もある。
 同製剤の適応はいま、全国約50人の先天性疾患だけだ。だが、検査などでウイルスを除く技術が進んだ現在、大量出血時に輸血量を減らせる効果が注目され、肝臓移植手術や出産時の大量出血については再び認めるように求める声がある。米国は77年に承認を取り消した一方、ドイツなどでは先天性疾患以外にも使われてきた実績がある。

冷静な検証必要 

 そもそも肝炎感染者の多くは、輸血や、予防接種時の注射器使い回しなど不適切な医療行為で感染したとみられる。どうすれば被害を最小限に食い止めることができたのか明らかにすべきだ。
 基本合意書に盛り込まれた「検証」作業では、一律救済の下であいまいにされた問題点を科学的に歴史的に、そして冷静に、分析する必要がある。

(編集委員・出河雅彦)

 この記事は、薬害肝炎問題の要点を非常に簡潔にまとめています。少ない字数の中で問題の複雑さにも言及しており、僕はこの記事を非常に高く評価します。

 しかし、この記事の唯一の(そして最大の)問題は、「リスク受忍論」についての記述です。

 医療行為においては必ず「避けられないリスク」が存在し、それは受忍しなければ医療行為が成り立ちません。手術には失敗の可能性がついて回り、薬には必ず副作用があるのです。だから、これは「論」以前の大前提なのです。

 同記事が言うところの「リスク受忍論」というのは、「リスク受忍の名の下に、軽減できる被害が放置されてきた」問題を指摘するものです。この指摘は正しいものです。
 しかし、この記事を医療に詳しくない一般の方が読んだとき、はたしてそのような読み方をされるでしょうか?

 同記事は「リスク受忍論」を
  「治療で命が助かったのだから、多少の副作用は仕方ない」
 と説明しています。それを否定したら、読者は
  「治療で命を助けるためでも、多少の副作用すら許されない」
 というような誤信を抱かないでしょうか?
 さすがにそこまでは行かずとも、
  「多少の副作用ならまだしも、甚大な副作用は許されない」
 と思わないでしょうか?

 副作用の問題は大きさの問題ではありません。
 避けられるかどうかの問題です。

 その点で誤解を与える記事であることに、僕は不安を覚えました。

◆ ◆ ◆

 僕が最も評価する記事でさえこの状況ですので、他の記事はもっと酷い状況でした。

 一例だけとりあげると、毎日新聞は社説でまで「医療のリスク」の視点を欠いた批判記事を書いています。
  『薬害肝炎の政府責任: 毎日新聞社説への反論』

 薬害肝炎問題の本質は、「避けられた被害を発生させてしまったこと」でした。その点を十分に訴えていない記事が、多すぎるように思います。

◆ ◆ ◆

 いま、医療崩壊が叫ばれています。
 医師の偏在と過酷な勤務、そして医療訴訟のリスク増大が現場の医師を追いつめています。

 これは、国の医療費削減のしわ寄せであると同時に、国民の過重な期待が原因でもあります。
 医療に「確実」など求めることはできず、それを求めることは国民自身の不利益に直結します。
  『医療崩壊: この国の医療をむしばむもの』

 運命を前に激情に駆られて、被害が大きかったという理由だけで「過失があったはずだ」と決めつけることが、医師を追いつめます。
 不当な医療訴訟の増加が現場の医師を減らし、産婦人科を初めとするいくつかの診療科目での医療崩壊を促進しています。

 僕は、このような状況はマスコミの偏った報道こそに原因があると考えます。
 医療にリスクがつきものであることを周知せず、安易に被害ばかりを喧伝する姿勢が、今日の国民意識と医師の窮状を招いたのだと思います。

◆ ◆ ◆

 本来、国の失政である薬害肝炎問題と臨床現場の医療過誤(疑惑)問題は別物です。
 しかし、国民が「医療の避けられないリスク」に十分な注意を払わなければ、これらは同じものになります。
 国民は無理難題をふっかけ、それがますます医療の質を落とす悪循環を繰り広げます。

 医療に関する報道問題は、多くの医療ブログが精力的に取り上げられておられます。
  医療報道を斬る
 医療報道の多くは専門家である医師が読んでも意味不明です。また、わざわざ報道するだけの意義があるのか疑問に思うこともたびたびです。ジャーナリストならば、明瞭な内容の、報道するだけの意義のある記事を書いて欲しいと思います。このブログが、少しでも参考になれば幸いです。

(同ブログトップページより転載)
 ここでは一つだけご紹介しましたが、他にもたくさんあります。

 プロのジャーナリストなら、医師の意見に触れる機会はいくらでもあるはずです。
 自社の記事が持つ社会的影響力を考え、責任ある報道をメディア各社に求めます。

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私、アイスゆずは、「薬害肝炎問題」にとても関心があり、何度も<白鳥一声>の管理人様に議論をしかけました。そちらの管理人様は、私の問いかけに答えて下さっただけなのです。また、そちらの管理人様は、以前から今回の和解について問題を指摘しておられ、もっと広く多くの患者が救済される方法を取るべきだったとおっしゃっていました。私の方が、「今回の和解は仕方がなかった」と言っていたのです。<白鳥一声>をよくお読み頂けば、「もっと広く、公平に、多くの方を救済するべきだ」と書かれていることが、お分かり頂けると... ...続きを見る
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コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
はじめまして。
いろいろ勉強になります。
医療のリスク受忍論ですが「治療で命が助かったのだから、多少の副作用は仕方ない」ではなく、「得も損もあるのが薬。まとめて受け入れよう」と言うのが医療を受ける側の精神であればなと、思います。今回の薬害訴訟も恨みなどあまり前面に押し出さず、国や製薬会社が故意に起こした証拠などないのですから、責任など問うのではなく事務的に被災者として救済のみを訴えれば良かったのではないかと、つくづく思います。恨みを言えば言うほど自分たちの非など次々にボロが出てくるようで見るに堪えません。議員立法など最悪の結果と言わざるを得ない内容でしょう。


大豪寺
2008/02/05 16:08
 大豪寺さん、はじめまして。アイスゆずさんのところでお姿お見かけしておりました。お越しいただいてありがとうございます。

>「得も損もあるのが薬。まとめて受け入れよう」
 本当に、そう思います。
 ただ、薬害肝炎に限らず医療過誤問題というのは、「それでも納得できないケース」をどう扱うかが本質であるように思います。極端な話、「医者が酒によって手術したから死んだ」のはやりきれないわけです。
 でも、じゃあ、どうやって「納得できないケース」を決めるのか。今回の場合は、国の対応はどちらに属する話だったのか。それが問題だったように思います。
 それでも、今の国民の意識は医療に対して厳しすぎるように思っています。そのことを考えるきっかけとなれるブログにしていきたいなと思っています。
birds-eye
2008/02/06 00:13
私に言わせてもらえるなら見放され見捨てられたと言う気持ちにしかなれないのが正直な気持ちです表立つ事すら!最初から出来ず意見や訴える事が出来ない状況にしたのも弁護団達や原告達です原告達と同じように活動しながらも私みたく証明出来ない人間の訴える声もとりあげず提訴出来ない人間には本当に事務的な扱いをしたのも事実です全員救済を掲げなから!自分達だけは救われたと言わんばかりに!私は救われたと聞く為に署名や募金活動をした訳じゃない!私だって生きて行く為に報われたい証明して保証金で治療したいんですよと言いたい
あき
2008/02/07 00:09
あき様へ
私は、アイスゆずと申します。別のブログの管理人です。コメントを読ませて頂きました。私のブログ「誰に投票する?」で、あき様へのメッセージを書かせて頂きました。どうか、お読み下さい。
「誰に投票する?」
http://39774186.at.webry.info/
あき様へ アイスゆず
2008/02/07 04:39
あき様へ
ここの管理人様は、ずっと前に、この和解の問題点について私に教えて下さったのです。きれいごとばかり言っていたのは、私なのです。どうか、私のブログであき様へのメッセージをお読み下さい。お願い致します。
あき様へ アイスゆず
2008/02/07 05:08
> 副作用の問題は大きさの問題ではありません。
> 避けられるかどうかの問題です。

この「避けられる」の意味が、私には不明です。そして、「副作用」について大きさ(軽重)で論じることを否定すれば、すべての薬剤が使えないでしょう。薬剤をまったく用いない医療を実践するならば、別ですけれど。

この特集冒頭にも書かれていますが、「副作用」に対する、birds-eye さんのお考えが、私にはいまひとつ理解できません。

『毎日新聞』社説は、あまりにひどかったので、私も批判メールをその日(2007年12月30日)のうちに出しました。論説委員から返信が2回来ました。
北村健太郎
2008/02/09 17:51
 こちらは、連載1でお返事を書かせていただきました。
>「副作用」について大きさ(軽重)で論じることを
>否定すれば、すべての薬剤が使えないでしょう。
 これは、「副作用が大きいというだけでは、非難する理由には不十分だ」ということが書きたかったのです。
 もちろん、薬剤に限らず医療行為全てはその効用と害を秤にかけるべきです。でもそれで望ましくない結果に終わったときに、逆上して訴訟に及ぶ例が社会問題になっています。それを一般の方に指摘したかったのです。

>『毎日新聞』社説は、あまりにひどかった
 やっぱりそうですか。それを指摘してくださる識者の方がおられることに安心しました。
birds-eye
2008/02/11 14:25
>「副作用が大きいというだけでは、非難する理由
>には不十分だ」
>逆上して訴訟に及ぶ例が社会問題になっています。

医療が常に持つ不確実性のことですか。それなら、分かります。そのあたり、もう少し書き方を工夫していただくと良いと思います。
北村健太郎
2008/02/11 21:24
> 書き方を工夫
 ご指摘ありがとうございます。補記を入れさせていただきます。
 自分で書いていると分からないので、このようなご指摘はとても参考になります。論文なら投稿前に研究仲間に指摘してもらえますが、ブログは一発勝負の難しさがあります。
birds-eye
2008/02/12 22:19

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