我々は福島大野病院事件で逮捕された産婦人科医師の無罪を信じ支援します
この記事は、職業として医療に関わらない一般の方に向けて書きます。 事件の概要については、Wikipediaが簡潔にまとまっているのでごらん下さい。 『福島県立大野病院産科医逮捕事件』 Wikipedia 2004年当時、同院における産婦人科常勤医師は1人であった(俗にいう「一人医師体制」)。医師の方が書かれたものとしては、こちらの文章が参考になります。 福島の産婦人科医起訴逮捕事件は、世間はともかく医療界では深刻な論議を呼び起こしています。医療のプロとも言うべき医師は真摯な議論の末、分かるだけの情報を分析し、逮捕された医師に犯罪的行為が無かったと判断しています。医学界が一医療事故に対して、これほど多くの医師が診療科の枠さえ超えて検証したことは前代未聞です。それでも結論は無罪です。ごく一部の医師が異論を唱えるかもしれませんが、産婦人科集団の最高権威である産婦人科学会も無罪であると公式表明しているほどの事例です。また、具体的な医療行為の内容まで含めた経緯は、こちらをお薦めします。 『母体死亡事例の少し詳しい経緯』 ある産婦人科医のひとりごと 新聞報道を集めたものとしては、患者さんの側の声も含め、同じブログのこちらの記事が参考になります。(僕は読み切れていません) 『大野病院事件 第12回公判』 ある産婦人科医のひとりごと まず、この事件の重大性を知ってください。 医療行為の望ましくない結果によって医師が逮捕され、刑事責任を問われることは、医療を根底から崩壊させる重大な問題です。 それは、例えば次のようなことにも並ぶと、僕は認識しています。
医師という職業にもこれと同等の配慮が必要だと僕は考えます。しかし現在それは実現されておらず、福島大野病院事件において不当な逮捕は現実のものとなりました。 なぜ、医師が刑事責任を問われてはならないのでしょうか? それは、患者の死で業務上過失致死罪を問われるならば、医師という職業を合法的に行うことはできないからです。 医療は不確実であり、必ず死と向き合う職業です。 そして、その医療行為の妥当性は、同業である医師にしか判断できません。 さらに、ある時点での医療行為の是非を、結果論で論じるのは危険です。 福島大野病院事件は、医療過誤とは言い切れないと、多くの医師が検討しても意見が一致する困難な症例でした。 それで患者さんがなくなったことには、哀悼の意を表します。しかし、医師が刑事責任を問われてはなりません。 さらに、今回の逮捕が不当だった理由があります。 逮捕された産科医は、福島大野病院におけるたった一人の産科医でした。 この地方の周産期医療を一人で支え、年間200例もの出産を手がけていたそうです。 当然、出産は平日の昼間を選んで起きたりはしません。この医師に限らず、一般的な産科医は労働基準法の水準をはるかに超える過酷な労働を強いられています。 病院に一人しか産科医がいなければ、交代で休むこともできません。 違法な長時間労働を強いられてまで地域医療に貢献してきた医師を、その医療行為が100点満点でなかったからといって、罪を問うことができるのでしょうか? 医師が逮捕された平成18年2月18日は、事故が起きた平成16年12月17日の1年以上後でした。 日本医師会によると、それまでの当局の捜査に、医師および病院関係者は真摯に対応してきたそうです。(日本医師会 *PDF) 例え刑事事件として起訴されるにしても、「逮捕」は証拠隠滅のおそれなどがあるときにしか行えません。事件から1年以上経過した後の逮捕が妥当であったか、疑問です。 この事件の影響は、重大なものでした。 逮捕された医師は現在保釈されていますが、医師としては働いていないそうです。(Nikkei Medical Online 2007.01.25 ブログ『ある産婦人科医のひとりごと』の転載による) その医師のお父様もやはり医師でしたが、マスコミのバッシングのため、開業していた医院を閉鎖せざるを得なくなったそうです。(『福島県大野病院事件のウラで』 元気に明るく生きて行ける社会のために、医者のホンネを綴りたい) この事件は、関係者の人生を台無しにしました。 このような経緯は、産婦人科からの医師の逃散を招いています。 『医の現場 疲弊する勤務医(1)「医師逮捕」心キレた』 読売新聞 2007.04.30 悪意ある違法行為でなく、自分の力が及ぶかぎりの医療行為で罪に問われるならば、医師のこのような反応は当然のものです。 さらに、産婦人科に残った医師にとっても、この事件は不当な診療を強いるものです。 検察は「医師は大量出血を予見して、はじめから子宮摘出を行うべきだった」と主張しています。ネット上ではこんな声も聞かれます これが前例となって、 子宮摘出が事実上の義務とされるわけです この裁判が有罪となったら、ちょっとでもなにかあったら子宮摘出がstandardになるだろうね。 「初産で必ず帝切・子宮摘出」にすれば第2子以降の合併症は防げるな(以上、『福島県立大野病院事件初公判 (その4) 判決が産科医と妊産婦にもたらす暗い未来』 天漢日乗にあった転載より引用) また、検察は「医師にはこの事故を異常死として届け出る義務があった」と主張していますが、「異常死」の定義は示されていません。 このような状況は、医療現場に深刻な混乱を招いており、患者と医療者の信頼関係を壊しています。 『医の現場 疲弊する勤務医(1)「医師逮捕」心キレた』 読売新聞 2007.04.30 (前略)が、その後の病院の対応が両親との信頼関係を壊す。大野病院事件の医師は異状死体の届け出義務違反でも立件されたが、この二の舞いを恐れた病院側が警察に連絡したのだ。警察官の姿を見た父親が叫んだ。「なぜ警察を呼ぶの?(司法解剖で)顔も切るの? 僕の赤ちゃんだよ」 このように、福島大野病院事件は、僕たち市民に重大な不利益をもたらしています。 市民一人一人が声を上げ、 この逮捕を不当なものとして周知することを、 ご協力お願いいたします。
|
| << 前記事(2008/02/17) | トップへ | 後記事(2008/02/19)>> |
| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|---|
福島大野病院事件2.18キャンペーン
我々は福島大野病院事件で逮捕された産婦人科医師の無罪を信じ支援します ...続きを見る |
誰に投票する? 2008/02/18 00:14 |
福島大野病院事件
身近な人を喪うことはとても悲しいことです 生きていればそんな悲しみを経験しないわけにはいきません 私は医師として できることならそんな悲しみに寄り添いたいと考えています 私だけでなく 死にゆく人に接することの多い医師の多数はそうであろうと思います ...続きを見る |
Dr. 鼻メガネの 「健康で行こう!」 2008/02/18 01:13 |
我々は福島大野病院事件で逮捕された産婦人科医師の無罪を信じ支援します
我々は福島大野病院事件で逮捕された産婦人科医師の無罪を信じ支援します ...続きを見る |
ある町医者の診療日記 2008/02/18 12:04 |
[忘れない・・・]2.18企画 我々は福島大野病院事件で逮捕された産婦人科医師の無罪を信じ支援します
今日は二年前の「福島県大野病院の産科医の不当逮捕」の日であります。産科医として正しい治療を行ったのに、刑事事件として書類送検ではなく逮捕され不当な取調べを受け、その病院から産科診療を停止させた福島県警の事件です。 テレビカメラを呼んでの医師の逮捕劇はあきらかに「異常」でした(誰がテレビカメラを呼んだのかは知りませんが、マスコミは喜んで取り上げましたね)。これは海外ではありえません、日本はこの件だけで、法治国家ではなく「法痴」国家です。医療ミスがあったら民事訴訟となるのは仕方ありませんが、今回は... ...続きを見る |
東京日和@元勤務医の日々 2008/02/19 02:01 |
福島大野病院事件から2年
『我々は福島大野病院事件で逮捕された 産婦人科医師の無罪を信じ支援します。 』 ...続きを見る |
健康、病気なし、医者いらず 2008/02/20 00:44 |
我々は福島大野病院事件で逮捕された産婦人科医師の無罪を信じ支援します
私は医療関係者ではありませんが、「我々は福島大野病院事件で逮捕された産婦人科医師の無罪を信じ支援します」のキャンペーンに賛同を表&... ...続きを見る |
村野瀬玲奈の秘書課広報室 2008/02/24 00:33 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
この産婦人科医師に業務上過失致死罪の立件は難しいと思います。医療ミスはしていないからです。それを逮捕したのでは、医師の心が切れるのもよくわかります。業務上の過失の有無という視点では、医師が1人しかいない状況を生んでいる病院経営に過失があります。この場合、県立ですので福島県に問題があるかと。この病院のHPでは外科医も2人、小児科医も1人。医師が病気になったらどうなるの?って聞きたくなりますね。きっと福島県が裏で糸を引いていると思います。 |
一般人 2008/02/18 16:26 |
一般人さん、いつもコメントありがとうございます。医師の窮状へのご理解、とても心強く思います。 |
birds-eye 2008/02/18 22:36 |
(つづき) |
birds-eye 2008/02/18 22:40 |
我々は福島大野病院事件で逮捕された産婦人科医師の無罪を信じ支援します |
桜井純一郎 2008/02/18 22:45 |
医師不足は深刻だと思います。特に人口が少ないところほど医師不足は深刻だと思います。私も開業医がいるから医師の数は足りてるとは思いませんよ。一番重要なのは今の医師数でいかに効率よく医療を行うかが問題だと思います。今、目の前の問題です。開業医(9時5時)が病院で働いてもらえるような仕組み作りが必要かと。近所の開業医では、午後は大学病院の医師が毎日日替わりで来ています。医療連携するには余りにも遠く離れた大学病院から。100m先には医療連携すべき大学病院があるにも関わらず。どうも出身校別の派閥関係のようです。私は国に期待するよりも地方の自治体と医師会の連携が重要だと思います。 |
一般人 2008/02/18 22:54 |
桜井さん、キャンペーンへのご参加ありがとうございます。 |
birds-eye 2008/02/18 22:57 |
一日中キャンペーンを追いかけてここにもたどり着きました。 |
HDsurgery 2008/02/19 00:47 |
トラックバックありがとうございました。「産科医療」はもはやギリギリです。そこへこの大野病院事件、どれほど現場の先生の「士気」に影響したのかはわかりませんが、産科医を目指す若者が減ったというのは事実です。医師は「患者を助けたい」のです。そのために失敗するたびに刑務所へ連れて行くことは他の先進国じゃありえません。これをもう少し拡張すれば「仕事」を一生懸命している人を「ミスしただろ」といって刑を問われれば誰もその仕事などできません。やはり「民事裁判」だけで行われるべき性格の事件だったと思います。ありがとうございました。 |
skyteam URL 2008/02/19 02:05 |
>一般人さん |
birds-eye 2008/02/19 22:48 |
>HDsurgeryさん |
birds-eye 2008/02/19 22:52 |
>skyteamさん |
birds-eye 2008/02/19 23:02 |
私も福島大野病院事件で逮捕された産婦人科医師の無罪を信じ支援します。 |
Dr. I URL 2008/02/20 00:41 |
Dr. Iさん、キャンペーンご参加とトラックバックありがとうございました。 |
birds-eye 2008/02/20 22:11 |
問題は医師不足だけではないでしょう。結局こう言ってしまえば実もふたもありませんが、詰まる所お金でしょう。資金がないと医療はできません。たとえば夜間帯に医師が一人だけいてもどうしようもないわけで。つまり2次救急、3次救急の患者が来た時、それに対応できるだけの設備、人員(医師以外も必要)がその病院に備わっているかでしょう。まさか全ての科に対し当直医をそろえるなんて事はよほどの大規模病院でもなかなかできるものではありません。もしできたとしてそれだけの人員を揃えた分の費用人件費を補うだけの患者が常に夜間帯に来るでしょうか?仮に医師を5人看護師、検査技師、薬剤師、事務、レントゲン技師全て揃えて待機させると果たして一晩でいくら人件費、その他諸経費が必要となるでしょうか?間違いなく大赤字です。誰もボランティアでは働けません。医療とはお金のかかるものなのです。 |
大豪寺 2008/02/21 13:15 |
こんばんは〜 いつもわかりやすく書かれているので、一般人としては有難いです。 今、医療を取り巻く環境は厳しくなるばかりです。 |
E 2008/02/22 21:48 |
>大豪寺さん |
birds-eye 2008/02/24 00:23 |
| << 前記事(2008/02/17) | トップへ | 後記事(2008/02/19)>> |