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zoom RSS 薬害肝炎まとめ 8.政府に望む今後の対応

<<   作成日時 : 2008/02/01 21:24   >>

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「何より対応遅れの反省が大切」 
「速やかな一般対策の実施」 
「救済範囲のゆがみの是正」 
「官僚の人事の透明化」 
「内部告発者保護制度の拡充」 
「医療のリスクについての国民の啓発」 
「予見できない副作用被害を救済する制度の制定」


◆ 薬害肝炎まとめ 目次 ◆

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(追記)
このエントリーは、「科学に責任を持つ市民のブログ」の理念にもとづいて書かれています



 この薬害肝炎問題から、僕たちは国に何を求めるべきでしょうか?
 それを僕なりに考えてみたいと思います。

◆ ◆ ◆

 国はまず、肝炎対策が遅れたことを十分に反省すべきです。
 そこが出発点として欠かせないと、僕は考えます。

 原告団への補償は決まりましたが、肝炎全体への一般対策はまだ実現されていません。
 これが誤った順番であることを、国は認識すべきです。

 国の責任を追及して争う「補償(賠償)」は、決着まで時間がかかるものです。しかし、国の責任の有無にかかわらず、推定350万人の肝炎患者の方々には何らかの支援策が必要でした。

 始めに一般対策を充実させ、その次に国の責任範囲を慎重に議論すれば良かったのです。

 国は、肝炎被害の防止策も不十分で、被害発生後の対応も鈍重でした。
 これから行われる肝炎対策は、全てこの反省の上に成り立つべきです。

◆ ◆ ◆

 ウイルス性肝炎のインターフェロン療法支援政策は、まだ法案が可決されていません。
 国はできるだけ早く、この肝炎一般対策を実現すべきです。

 ウイルス性肝炎のインターフェロン療法は、B型・C型肝炎が肝硬変・肝がんに進行するのを防ぎます。これは患者の方々の命に関わる問題です。
 しかしインターフェロン療法は月8万円という重い経済負担を強いられるので、治療が行えない方も大勢おられます。
 また、自覚症状が現れにくいC型肝炎は、検査を促進しなければ治療も行えません。

 ウイルス性肝炎の検査と治療を促進するこの一般対策を、国はできるだけ早く実現すべきです。

◆ ◆ ◆

 国は、「薬害肝炎救済法」をできるだけ早く改正し、原告団との「一律救済」和解で生じたゆがみを是正すべきです。

 薬害肝炎訴訟の和解は、第5回で書いたように大きなゆがみを生じました。数千万の補償金を得た原告の傍らに、補償から漏れた多くの方々がおられました。
  • 投薬証明が得られなかった方
  • 予防注射の注射針使い回しで肝炎感染した方
  • 血液製剤でも、第8因子製剤により肝炎感染した方
  • 血友病への血液製剤投与や、輸血により肝炎感染した方


 これらの方々にまで、「数千万円規模の」補償金を払うのは難しいかもしれません。
 しかし、少しでもこの不公平を是正するために、国は対策を行うべきです。

 投薬証明が得られなかった方には、その「疑わしさに応じて」追加の見舞金を支払うことはできないでしょうか?
 出産経験があり、母子手帳に大量出血の記録が残っていれば、血液製剤の投与は「疑うことができる」状況です。「診療記録が残っていない」というだけで一律に切り捨ててしまうのではなく、少しだけでも一般対策に上乗せした見舞金を支払うことができれば、被害者の方の心の負担も軽くなるでしょうし、「投薬証明」を追究される医療現場の負担も和らぐのではないかと思います。

 予防注射の注射針使い回しは、すでに最高裁で被害者が勝訴している事例もあります。このような例が救済法から漏れるのは不公平です。
 予防注射「使い回し」は、血液製剤よりもその証明は困難なのかもしれません。しかし、例えば「同時に予防注射を受けた同級生に複数の肝炎患者がいる」という場合には、やはり「疑わしさに応じて」見舞金を払うことはできないでしょうか?

 第8因子製剤による肝炎感染は、僕は十分な知識がありません。しかし、もしも他の血液製剤と同じように「治療上の有効性よりリスクのほうが大きいと(少なくともある時期以降は)判断できた」状況が認められるならば、救済法から漏れるのは不公平です。

 輸血や血友病の治療による肝炎感染は、あるいは避けられないものだったのかもしれません。しかし、国の肝炎対策が遅れたことでその症状が悪化した側面はあるはずです。肝炎への一般対策には肝がん・肝硬変への治療費助成は含まれていませんが、その施行までにウイルス性肝炎から悪化した方には「救済法」の枠組みの中で支援が行われても良いのかもしれません。

 幸い、薬害肝炎救済法にはこれら救済から漏れた被害者への配慮を定める付帯決議がつけられています。
 その決議に基づいて、これらの方々への早急な対策が進められるべきです。

 ただし、これらの配慮は、そこから漏れる人たちのことまで念頭に置いて実施されなければなりません。
 肝がんにまで支援の手を差しのべるなら、それが他のがん患者にとって不公平とならないだけの理由付けが必要です。
 それが叶うかぎりにおいて、僕はこれらの対策が進められることを望みます。

◆ ◆ ◆

 国は、これを機会に官僚の人事制度を透明化するべきだと考えます。

 第7回でも書いたように、今回の薬害肝炎問題では厚労省の官僚人事に重大な問題がありました。
 これはこの一件に限らず、日本の行政府全体に見られる問題だと思います。

 僕は、官公庁が官僚の人事基準を透明化し、重要な役職についてはその昇進の理由となった業績を公開する制度を設けるべきだと思います。

 さらに、若手・中堅の官僚について、例え役職が低くても賞賛すべき働きがあればそれを報奨する制度を設けるべきだと思います。
 「若手官僚でも問題提起を行えば顕彰・抜擢される」
 薬害肝炎の問題において、もしも当時の厚生省にそんな制度があったなら、被害の拡大は防げたのではないでしょうか?

 そのような、効率的で透明性の高い人事制度を求めます。

◆ ◆ ◆

 ずさんな新薬開発とその審査については、内部告発の奨励と告発者の保護が拡充されることを求めます。

 国と製薬会社のずさんな実態については、第6回で取り上げました。
 患者の命を軽んじるこのような医薬業の実態が、被害者の方々の無念をかきたてました。

 新薬開発のような高度に専門的な業務に、外部からの監視は馴染みません。自分の研究のことはその研究者が一番よく知っているのであり、他人などいくらでもごまかすことができるからです。
 しかし、研究者の多くにも良心は備わっています。その良心に期待することならできます。
 したがって僕は、このような専門領域の体質改善には、内部告発にもとづく問題解決に頼るしかないと考えます。

 今ある内部告発者保護制度(公益通報者保護法)は不十分だと考えます。この現行制度は、企業による報復が行われたら告発者は勝てるとは限らない裁判に訴えねばならず、善意の告発者に過重な勇気とリスクの負担を要求するものです。
  『公益通報者保護法の問題点』
   福原社会保険労務士事務所ホームページ

 薬害が起こった際の重大性を考え、僕は「有益な通報を行った告発者には、例え閑職に回されても経済的損失が生じないように、その退職する年齢まで一定額の給付金を与える」ことを提案します。そのくらい手厚い奨励策が必要だと考えます。

 確かに、内部告発の奨励は諸刃の刃です。「企業秘密の漏洩」「従業者の相互不信の助長」「見返りを期待した虚偽の告発」などいろいろな問題が考えられます。
 しかし、医療の安全を守るために、他に手段はないのではないでしょうか?
 まずは内部告発の奨励を前提として、これらの弊害については最善の防止策を模索すべきだと考えます。

◆ ◆ ◆

 以上に述べたような反省を行う傍ら、国は「医療のリスク」について国民の啓発も行うべきです。

 そもそも肝炎被害の対策が遅れたのは、「被害をおおやけにすると国民がパニックになる」という危惧があったからだと思います。
 それが被害者リストの放置などにつながり、大きな禍根を残しました。

 しかし、医学に限界がある以上、薬剤による健康被害は必ず発生するものです。
 その被害を最小限に食い止める努力は必要ですが、国民にもそれを受け入れる覚悟が求められます。
 なにより、国民が持つべき正しい医学知識というものがあり、それを備えない国民のもとでは健全な薬事行政など行えないのです。

 避けられない健康被害で責任を問われる風潮はなくすべきです。

 そのために国民を啓発する努力も、国が行うべきだと考えます。

◆ ◆ ◆

 最後に、僕は「予見できない副作用への無過失補償制度」を提案します

 どんな薬にも、予見できない副作用の危険はついて回ります。
 しかし、たまたまその不運に見舞われた人だけが過重な医療費負担を求められ、また責任追及のために政府と争うことを強いられるのは間違っていると思います。

 これが、薬害肝炎や薬害エイズで被害者の方々を苦しめた現実でした。

 しかし、あらかじめ「予見できない副作用が生じたときのために」国民全体で基金を設けておけば、さしあたりこのような方々に当座の経済的支援を行うことができます。
 それで治療を続けられるでしょうし、明らかに国の不正があれば時間をかけて裁判することもできます。
 薬害肝炎や薬害エイズに限らず、全ての薬剤についてそのような制度が整えられたらよいと思います。

 「リスクの社会化」(副作用のリスクは国民全体で負担する)、「立証責任の転換」(法廷で争わなくても、さしあたり補償を受けられるようにする)の観点から、血液製剤に限らない全ての医薬品について、「予見できない副作用被害の無過失補償制度」が整備されることを望みます。


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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
> インターフェロン療法支援政策

が、肝炎対策の「すべてではない」ということを確認しておきたいと思います。

> 「薬害肝炎救済法」をできるだけ早く改正し、

ここでいう「救済法」が、今回の特措法を指すのならば、それは無理でしょう。仮に改正できるとしても、私は良い方法とは思いません。なぜなら、今回の特措法は、「和解をするための給付金手続き法」だからです。

改正といっても、法律全体の枠組みが変わってしまうのですから、新しい法律を作るほうが早いと思います。
北村健太郎
2008/02/09 17:19
> 「予見できない副作用への無過失補償制度」

は、充実させるべきですが、現在でも「医薬品副作用被害救済制度」と「生物由来製品感染等被害救済制度」があります。

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
http://www.pmda.go.jp/operations/higaikyusai/outline/higaikyusai_1.html

今回の特措法でも、本機構を国・製薬企業の拠出金のプール先としています。

日本政府は「まったくしていないわけではない」のですが、これらが充分に機能していないのです。ちなみに、本機構が天下り先の一つになりえます。
北村健太郎
2008/02/09 17:30
どうやら、URLが2行以上になると消えるみたいですね。御容赦ください。
北村健太郎
2008/02/09 17:33
> インターフェロン療法支援政策
 連載7でもお返事書きましたように、改めて記事にさせていただきます。

>新しい法律を作るほうが早い
 なるほど… 特措法の性質や改正の実現可能性については、僕は自信がありません。
 特措法が僕の思っていたような枠組みではないようです。この点も、改めて別の記事に(北村さまの「現代思想」記事の紹介と併せて)書かせていただきます。

>「医薬品副作用被害救済制度」と
>「生物由来製品感染等被害救済制度」
 こちらは、補足を書かせていただきます。
 前者のほうは、勉強不足ではありますが、「主に投薬の段階で予見できた副作用に対する補償」だと理解しています。予見できなかったもの「も」対象になるかもしれませんが、製薬会社などの違法行為があれば補償対象外になるなど、「薬害被害者の立証責任の転換」という観点からは弱いと理解しています。
 後者のほうは存じ上げませんでした。調べてみます。ご指摘ありがとうございました。

birds-eye
2008/02/11 14:15
(つづき)
>「まったくしていないわけではない」
 これも、補足を書かせていただきます。
>本機構が天下り先の一つ
 リスト放置当時の医薬局長が、まさにこの機構に天下りしていましたね。

>URLが2行以上になると消える
 ウェブリブログの不具合のようです。申し訳ありません。
 改行を含めて選択→コピーすれば隠れている部分も取得できます。
birds-eye
2008/02/11 14:15
>特措法の性質や改正の実現可能性については、
>僕は自信がありません。

特措法全文は、私のホームページにありますので、ご参照ください。「法案」と書いていますが、そのまま成立したので、現行法です。

救済制度はあるが、現時点でどれくらい活用できるのか、充分であるのか、素朴に疑問ですね。この点は、birds-eye さんと近い認識ではないかと思います。
北村健太郎
2008/02/11 21:14
 特措法は、参考にさせていただきます。ありがとうございます。

 薬害肝炎問題は、いずれにしても今ここで目を離して良い問題ではなく、しばらく様子を見て改めて問題を整理する必要がありそうです。
 とりあえず半年後の予定にと、僕は心づもりをしています。
birds-eye
2008/02/12 22:11

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