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zoom RSS 薬害肝炎: 対立する与野党の違い

<<   作成日時 : 2008/01/10 00:10   >>

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彼らの幸福を願うのだとしても、
目についた一人だけを助けてはいけません。
その陰に隠れる、同じ苦しみを持つ大勢が、
ないがしろにされてはならないからです。 
――時には非情であることも求められます。

◆◆◆ 注意 ◆◆◆

この記事は、その論拠とした資料に重大な疑義が提示
されています。

詳しくはこちらをご覧下さい。
  『【過去記事に関する注意】薬害肝炎弁護団主張
   およびタミフル厚労省調査に疑義』


 薬害肝炎訴訟の原告を救済する法案が成立する見込みとなりました。原告となった被害者からは喜びの声も聞かれます。
  『薬害肝炎 救済法案が衆院通過、週内に成立へ』
   イザ!配信 2008.01.08

  『ようやく笑み…不満の患者も 薬害肝炎法案提出』
   イザ!配信 2008.01.08

 しかしこれは、高額な医療負担を求められるB型・C型肝炎の患者すべてを対象とするものではありません。医療行為によってこれらの肝炎を患った人だけでも、「投薬証明ができない人」「血友病など、投薬するのが妥当だったと判断される人」「輸血など、血液製剤以外の原因で感染した人」は救済範囲から除外されています。

 これらの人たちに対しても医療費助成を実現するため、国会では「特定肝炎」(B型・C型肝炎のこと)のための一般対策法案が議論されていました。しかし自民党と民主党で内容に隔たりがあったため、今国会では成立せず、次期国会でも論戦は必至のようです。
  『薬害肝炎:与野党案、隔たり
   一般対策の法制化先送り 次期国会で議論再燃必至』
   毎日新聞 2008.01.08
 (Web魚拓

 毎日新聞の同記事は、両党の案は「病状が進行した肝硬変・肝がん」への医療費助成に違いがあると指摘しています。
 C型肝炎は高い確率でこれらの病気を引き起こしますが、このような肝炎由来の肝硬変・肝がんまで医療費助成を行うかどうかが問われています。
 自民党は医療費助成を行わない方針を打ち出しているのに対し、民主党は「今後検討する」としています。

 同記事では、この違いをもとに民主党が「『幅広い患者の救済』をアピール」することを狙っていると述べられています。
 (朝日新聞では両案の違いは「国の責任」への言及の仕方だと述べられていることを補足します。ただし、2ヶ月ちかく前の記事なので、状況が変わっているのかもしれません)

 この政策論争で、僕たちはどちらを支持すべきでしょうか?
 両案がどのように異なり、そのどちらが政策として妥当かどうか、僕の考えを述べたいと思います。

◆ ◆ ◆

 自民・民主それぞれの法案は、以下のようなものです。この二つで、僕が気になったのは以下の相違です。
 自民党案民主党案
対策の理由国内最大の感染症
肝がんへの進行予防
国の責めに帰すべき事由
原因が解明されていなかった
重度の疾病への進展を防ぐ
肝硬変・肝がんへの
医療費助成
行わない今後検討
 他にも違いはありますが(助成費の額や、医療費助成以外の対策のあり方など)、それはここでは取り上げないことにしました。興味を持たれた方は、両党の公表している文書を読まれることをお薦めします。

 この違いを踏まえて、「肝炎が進行した結果として引き起こされた肝硬変・肝がん」に対して医療費助成が行われるべきかどうか、皆さまはどうお考えになったでしょうか?

 以下に僕の考えを述べます。

◆ ◆ ◆

 僕は自民党の法案に賛成です。肝硬変・肝がんにまで医療費助成の範囲を広げる民主党の案は無責任だと考えます。
 理由は、このような医療費助成には正当な理由が無く、同様の病苦に苦しむ他の患者に対して著しく不公平であると考えるからです。C型肝炎とは関連のない肝硬変・肝がんや、他の全てのがん患者を、民主党の案はないがしろにします。

 まず始めに確認するべき事があります。
 「被害が生じたことに、政府の責任が認められた」患者は、この一般対策法案が救済する対象には含まれていません。≪不要な投薬≫(だったかどうかにも賛否両論ありますが、それは置いておいて)によって肝炎を患った薬害被害者は、このたび成立する薬害肝炎救済法案ですでに補償される事になっています。
 だからこの一般対策法案によって救済されるのは、(よしんばそれが医療行為によって引き起こされた肝炎だったとしても)「投薬の時点では、肝炎を患うリスクを考慮しても、その医療行為がもたらす利益のほうが大きいと判断された」方々です。これは医療の限界であり、誰を責めることもできない問題です。
 投薬を証明する書類が入手できなかったために補償が受けられない方々は、非情に気の毒に思います。しかし、投薬が証明された事だけをもってそれを「感染の原因」と断定する今回の行政判断すら、じつはかなり被害者に配慮した判断でした(止血剤として血液製剤を投薬された人はしばしば輸血も受けており、そして輸血のほうが血液製剤よりもはるかに感染リスクが高いので、血液製剤は原因ではなかったかもしれないから)。不公平であることは認めます。しかしどこかで救済範囲を線引きしなくてはならない中で、根拠として乏しい投薬証明すら得られないのであれば、一段低い医療費助成で耐えることもあきらめざるを得ないと僕は考えます。こんな事を主張するのは非常に心苦しいのですが、そういうことだと思っています。
 だから、民主党が一般対策の根拠とする「国の責めに帰すべき事由」という文言は、的はずれであると僕は考えます。

 しかし、「国の責任を問えない」のであれば、それは他の病気と同じことです。月額8万円もの負担を強いられる病はなにも特定肝炎のインターフェロン療法だけではありません。そのなかで、なぜこれらの肝炎だけが「特別扱い」されるべきなのでしょうか? そこに妥当な理由はあるのでしょうか?
 もちろん、全ての病苦に対して過大な経済負担が取り除かれることが理想です。しかし、月額8万円という額自体が、すでに社会保障制度である高額療養費払い戻し制度によって軽減されたものです。低所得者や4ヶ月以上の長期療養者では、この額はさらに軽減されます。これ以上の軽減を求めるなら、それは社会保障制度全体を見直すべき問題であり、特定の疾患だけについて議論すべき事ではありません。
 「原因が解明されていなかった」ことも理由にはならず、この点でも民主党案は的はずれです。原因の解明されていなかった疾病はいくらでもありましたし、これからもあり続けます。僕たちは、発ガン性が発見される前にタバコを吸った人に対して、すべて治療費を助成するのでしょうか? 「医療行為の予期せぬ被害」に限って医療費助成を行うならばそれも妥当ですが、それならば血液製剤に限らず全ての薬剤を対象とする一般法を整備すべきです。
 だから、特定肝炎の対策を考える上では、その対策を行う妥当な根拠が必要となります。

 そこで両党ともに挙げている根拠が、「病状の進行を抑える」ことです。インターフェロン療法は、適切に実施されることによって、特定肝炎が重篤化して肝がんや肝硬変となるのを防ぐことができます。
 これは、長期的に見れば医療費を抑えることになり、国民全体の利益につながります。それは「インターフェロン療法だけを特別扱い」する理由になるはずです。
 『弁護団の提言 ―命の救済と3兆円医療費削減のために―』
  薬害肝炎訴訟 全国弁護団ホームページ

 僕は、特定肝炎に対する医療費助成の一般対策は、この理由のもとに行われるべきだと考えます

 この事を考えるからこそ、僕は民主党の「肝硬変・肝がんまで医療費助成を検討する」案に賛成することはできません。肝硬変や肝がんが発症してしまえば、――これを言うのは非常に辛いのですが――それは他の肝硬変・がん患者の方々と分けて扱う理由が失われてしまうからです。同じ病苦に苦しむ人たちの中から、正当な理由なく一部の人だけを救おうとすることは、不公平であり、許されないことなのです。

 この問題に関しては、自民党のほうが配慮があります。肝硬変や肝がんに対しては医療費助成は行わないものの、「心身両面のケア」や「医療水準の向上」に取り組むことを掲げており、それは(実現されれば)特定肝炎に限らない全ての国民の利益になるからです。
 もしも万が一、民主党がこの点に考えを及ばせず、総選挙に向けた人気取りのためだけに「全員救済」を掲げているのだとしたら、それは断固として糾弾されるべき事です。それは民主政治が衆愚政治に堕とされることを意味すると僕は考えます。民主党が全員救済を求めるなら、特定肝炎由来の肝硬変・肝がん患者を医療費助成の対象に含める妥当な根拠を主張しなければなりません。
 これが、僕が医療費助成の範囲について自民党の案を支持する理由です。

◆ ◆ ◆

 最後になりましたが、薬害肝炎救済法で補償を受けられない方々――血友病や、輸血、予防注射の回し打ちによる肝炎被害――にも補償範囲の拡大を求める声があります。これについて、僕は被害者の方々がそうおっしゃりたいと思うだろうことは痛いほど理解できます。しかし、そのご意見に賛成することはできません。

 前にも書いたとおり、僕はこれを「避けられなかった医療の限界」だと考えます。被害が起こった当時、C型肝炎の感染リスクとその症状の重大さは十分に知られておらず、その知識で考えればこれらの医療行為はリスクより有益性が勝るものだったはずです。このような医療行為を断罪することは、将来の医療現場と薬事行政を崩壊させ、国民全体の不利益となります。

 僕はそもそも、薬害肝炎救済法が被害者の方々を、「最初の一人から、投薬の時期によらず、一律に」救済することにも反対でした。このような政治決着が行われたからこそ、その網からも漏れてしまった方々の苦しみがより大きなものになったのだろうと考えています。防げた被害に対してのみ補償と謝罪が行われるべきでした

 しかし、だからといって救済範囲をさらに広げることはできないはずです。僕はこれをあえて≪過ち≫と呼びますが、過ちをもって過ちを償うことはできないのです。

 補償を受けられない特定肝炎の方々には、僕は何も言えません。補償を求めたくなる気持ちにいたる、妥当すぎる理由があります。しかし、賛成はできません。
 僕たち国民は、「補償を受けるべき」薬害被害者が補償を得られたことをよろこぶと共に、今回の決着が苦しみも生み出したことを忘れるべきではないと思います。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ぐはあっ…。
なかなか思うようにいきませんでしたが、取り合えず反論を書きました。orz
TB送りました。
おかしなところは、ビシバシ指摘してやって下さい。
 m(_ _)m
アイスゆず
2008/01/13 19:38
 アイスゆずさん、ありがとうございます。TB先のほうにお返事書かせていただきました。
birds-eye
2008/01/14 00:15

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