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zoom RSS 薬害肝炎まとめ 7.検証されるべき問題点(2) 問題化したあとの政府対応の鈍さ

<<   作成日時 : 2008/01/31 20:41   >>

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「被害の拡大は防げたはずだ」 
「リスト放置問題は責められるべきだ」  
「事なかれ体質の改善を」


◆ 薬害肝炎まとめ 目次 ◆

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(追記)
このエントリーは、「科学に責任を持つ市民のブログ」の理念にもとづいて書かれています



 血液製剤によるウイルス性肝炎への感染は、その最初の一例は防げなかったはずです。第4回
 しかし、その感染者が推定350万人といわれるまでに膨れあがり、またその支援対策が未だに始まってさえいないのは、政府の怠慢だったはずです。

 薬害肝炎問題を検証する第三者委員会は、この点も仮借なく追究すべきです。

◆ ◆ ◆

 朝日新聞の記事によると、欧米では血友病患者の薬害エイズ被害の際に肝炎対策も行ったそうです。
 日本では薬害エイズ問題で厚生省大臣が謝罪したのが1996年、提訴されたのは1989年ですWikipedia。エイズ患者の多くはウイルス性肝炎も患っていたのですから、肝炎被害が知られていなかったわけはありません。その被害を知っていて、政府は対策を怠ったということです。

 肝炎被害の防止策も、十分とは言えませんでした。第4回で「一律救済は無理」と書きましたが、これは「全ての被害は防げなかった」と書いただけで、「被害を縮小できる余地がなかった」と言っているわけではありません
 弁護団が製薬会社に提出した要求書によると、1980年以降に限定しても1万2000人以上の肝炎被害が生じているそうです。当時はC型肝炎ウイルスこそ同定されていませんでしたが、A型・B型は同定されており、残る「非A非B型肝炎」が重篤な疾患であることは判断できたはずです。
 たしかにC型肝炎ウイルスの混入を検出する方法はなく、代替製剤を作ることはできなかったかもしれません。しかし、1988年に行われた緊急安全情報の配布(これによりフィブリノゲン製剤の使用量は激減しました)は、その10年以上前、少なくとも米国食品医薬品局(FDA)が同製剤の承認を取り消した1977年には行えたはずのものだと僕は考えます。

 遅ればせながら、国は2001年から肝炎対策を実施しました(朝日新聞記事)。しかしそれでさえ不十分なものでした
 輸血経験者に検査を呼びかけたとのことですが、呼びかけが十分に周知されたか僕は懐疑的です。検査数が推定被害の350万人に遠く及んでいない現状を、国は認識していたはずです。呼びかけのポーズだけ取って責任を逃れようとするのでなければ、もっと実効性のある周知を心がけるべきでした。
 (先頃、社保庁問題の年金特別便で、記録漏れの疑いがある人の9割が「問題なし」という返信を送ってきたことが問題になりました。自分のことには自分で責任を持つべきで、国民にも問題があります。しかし、日々の生活に追われる国民に全ての責任を転嫁するのは酷だと、国も真摯に考えるべきです。
 検査を輸血経験者の自主性に任せきりにしたことも、同じです。)


 さらに、インターフェロン療法が普及せず、それが肝硬変・肝がんとなって亡くなる人が多いのも政府の責任です。
 救済を求める声は以前からあったのに、「約350万人ともされる膨大な感染者数に国は二の足を踏んだ」(朝日新聞記事)ことは許されません。
 350万人も感染者がいるからこそ、早急な対策が必要でした。

 ウイルス性肝炎のインターフェロン療法支援については、薬害肝炎が社会的にクローズアップされた後も官僚の鈍重さが目立ちました。
  『厚労省に振り回された政府与党 薬害肝炎問題』
   イザ!配信 2007.12.29
厚労省幹部は複数の政府・与党に「一律救済を認めれば国の負担は最大10兆円に膨らむ」「原告団には特定の思想がある」との情報を流し続け、与党側の譲歩を牽制(けんせい)。
 確かに、法律に従って税金を運用すべき行政府が、法的責任を超えた「一律救済」に自主的に応じることは難しかったかもしれません。しかし、もしも厚労省が真摯に問題を解決するつもりならば、問題解決に寄与するような妥協案を建設的に、積極的に提案すべきでした。薬害肝炎にまつわる一連の報道からは、厚労省のそのような姿勢は読み取れません。

 いわゆる「418人リスト」の問題も検証されるべきです。2002年の時点で国はこれらの被害者の肝炎感染を把握しており、その中には個人まで特定できる例が複数含まれていた(※418人全てが特定できるような資料ではなかったようです)にもかかわらず、2007年に問題が発覚するまで「国は告知を行わなかった」ことが問題視されています。
 国はこの問題を「責任があるとまでは言い切れなかった」と結論づけていますが、その妥当性は第三者委員会による再検討が必要です。
 ただし、告知の是非についてはリスト内に含まれた被害者の方からも異論が出ており、慎重な議論は必要です。
  『告知は誰がすべきか』
   出血大サービス赤札日記

 本来この告知を行うべきなのはその患者を受け持つ主治医であるべきなのに、一足飛びに国から告知されることには問題があります。プライバシーの問題もありますし、患者の主治医に対する疑心をかき立てることにもなりかねません。
 しかし僕は、それを踏まえても国がこのリストの活用に消極的で、それが被害を拡大した側面は否めないと考えています。また、このリストへの国の対応が被害者の方々を傷つけたことも事実です。少なくとも告知に踏み切っていれば、被害者の方々はよりよい治療を受ける機会が得られたはずなのです。告知の是非は主治医にゆだねるとしても、国の責任においてそのお膳立てを行い、最低限でも各症例で「告知したかどうか?」「告知しなかったなら、理由は何か?」くらいは状況把握しておくべきではなかったでしょうか?
  『418 リスト』
   薬害肝炎訴訟 リレーブログ


※なお、このリスト放置問題に関連して、桝添厚労相が「副作用被害の告知制度」を検討することに省内で慎重論が相次いでいるようです(『真相究明 厚労省重い腰』朝日新聞2008.01.16 ブログ『誰に投票する?』の転載による)。「制度化すると医師が副作用を報告しなくなる」ことが懸念されているようです。
 もちろん、慎重な議論は必要です。プライバシーの問題や医師との信頼関係など、懸案事項は確かにあります。しかし、副作用の報告促進は別の解決が図られるべき問題で、告知の制度化自体とは関係ないはずです
 国は、国民と医療関係者の中にある「副作用は全て悪だ」という誤信を払拭すべきです。悪いのは『薬害』であり、『副作用』ではありません第1回。それを啓発するのも国の責務であるはずで、それを理由に告知の制度化に反対するのは筋が通っていないと考えます。


◆ ◆ ◆

 これらの問題は、もちろん第三者委員会によって検証されなければなりません。

 しかし、検証作業はもっと根本的な部分に踏み込む必要があります。

 なぜ、このような問題が起こってしまったのか?
 その原因となった行政組織の構造的問題、人事制度を含む官僚組織の体質の問題こそが検証されるべきだと、僕は考えます。

 ある組織が健全に機能するか、腐ってしまうか、それを決定的に分けるのはそこに信賞必罰の人事制度があるかどうかです。
 組織の目的に反する行いをした個人には、ペナルティが与えられるべきです。
 そしてそれ以上に、組織の目的遂行に貢献した個人には、褒賞と昇進が与えられるべきです。

 第三者委員会は、この信賞必罰が実現されていたかどうかを解明する必要があると考えます。

 418人リストを放置した当時の医薬局長が、まさに薬害肝炎問題で問われた「医薬品の承認」「副作用被害の救済」業務を行う『医薬品医療機器総合機構』の理事長に天下っていました。それがメディアに報道されるやいなや、この理事長は辞職し、同機構はその理由を「一身上の都合」としか説明しませんでした。多額の退職金も発生しているはずです。
 『舛添厚労相、天下り規制強化の方針 「襟を正したい」』
  朝日新聞 2008.01.12
 (Web魚拓
 『元厚労省局長の独法理事長が辞職 肝炎リスト放置引責か』
  朝日新聞 2008.01.17
 (Web魚拓

 これは、厚労省の人事評価において信賞必罰が徹底されていないか、さもなくばそれが「国民のため」という目的の下に運用されていないということを意味しないでしょうか?
 第三者委員会は、この天下りの経緯を追究すべきだと考えます。


 さらにもう一つ、僕は第三者委員会に調べてもらいたいことがあります。

 例えば、良心的な中堅官僚(30代半ばくらい)が真摯に薬害被害を救済したいと考えたとします。
  「肝炎の検査とインターフェロン療法の支援策を徹底させるべきだ」
  「被害者リストから分かる人に告知を行うべきだ」
 組織の中でこのような発言を行った場合、それは当人の人事評価に好影響を与えたでしょうか?

 本来、このような良心的な官僚こそが、官庁の中で重要な役職に抜擢されるべきです。
 しかし、それは実現されていないのではないかと、強い不信感を僕は抱いています。

 ただでさえ忙しい官僚の業務で(※業務が忙しすぎることも問題なのです。問題に気づいたときに、対応する余力がなく、問題が埋もれてしまうのは労務管理上の重大な欠陥です)
  「忙しいから手が回らないよ。やりたいなら君一人でやれば?」
 と言われるだけならまだ良い方なのかもしれません。

 小うるさい奴と思われて、昇進に影響することはないでしょうか?

 このようなお役所「事なかれ主義」体質にメスを入ることを、第三者委員会の活動に望みます。

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コメント(11件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。ゆずアイスさんのトコから知りました。
真剣に考えておられる事に敬意を申します。
なんで、こんな事が繰り返しているかと言うと、
われら国民が、不明であった。
今の反省はそういうしかないのです。
C13シロウズ
URL
2008/02/03 12:33
 C13シロウズさん、お越しいただいてありがとうございます。アイスゆずさんに触発されて、気が付いたら薬害肝炎の泥沼にどっぷりはまっています(笑)

>われら国民が、不明であった。
 どうして欧米みたいに80年代に対応できなかったのか、とか、薬害エイズのときに解決できなかったのか、とか、いろいろ考えてしまいます。
 よりよい市民をつくる、なにか抜本的な方法があるといいのにな、と思います。
birds-eye
2008/02/03 19:19
> 朝日新聞の記事によると、欧米では血友病患者の
> 薬害エイズ被害の際に肝炎対策も行ったそうです。

に続く記述が、何を指しているのですか。「肝炎対策」とは、現在分かっている「すべて」の肝炎を含むのか、また「対策」とは何を指すのか。この記事だけで「欧米は良かった、日本はダメだった」という話であれば、それは乱暴でしょう。

日本でも、血友病者に限っては、肝炎医療費がエイズ対策とセットになって運用されています。これは、血友病者がHIV・HCVに罹患したため、ハイリスク・グループとして認識されたからです。

つまり、ごく限られた部分ですが、日本でも「対策」はされており、「ゼロではない」ということです。「日本はダメ」言説を振りまき過ぎると、それこそ良心的な官僚の士気をそぐことになります。
北村健太郎
2008/02/09 16:53
おっしゃるとおり、

> インターフェロン療法支援

を推進すべきですが、それと同時に、インターフェロンが効かない方や、体質などによってインターフェロン療法を「試すことさえ」できない方の存在も忘れてはなりません。

インターフェロン療法を強調し過ぎると、インターフェロン療法「のみ」にお金を出し、あとは知らん、という構えの政策が出てくることが危惧されます。今度は、インターフェロン療法支援で肝炎問題「全面解決」と言い出すかもしれません。
北村健太郎
2008/02/09 17:03
 ここ以降のお返事は、またあとで(できれば今日中に)書かせていただきたいと思います。所用で出かけますので。
 たくさんご指摘いただいたのに、お返事遅れてしまって申し訳ありません。
birds-eye
2008/02/10 13:14
 すみません復帰が遅れました。週末は家族づきあいで筆が進みません…orz

>…に続く記述が、何を指しているのか?
 @「血液製剤が持つ“非A非B”肝炎リスクの医師への周知」(1980年代)
 A「輸血・産時大量出血など経験者への、“B型C型”肝炎検査の十分な推進、および医療・社会的支援策」(遅くとも2000年代)
 を考えています。

>「日本はダメ」言説
 これは、僕の記事が軽率でした。ご指摘の通りだと思います。
 追記、訂正させていただきます。

>インターフェロン療法以外
 これについては、連載(追記)1で小林さまにいただいたご指摘と併せて、改めて記事にさせていただきます。
birds-eye
2008/02/11 13:50
>@「血液製剤が持つ“非A非B”肝炎リスクの
>医師への周知」(1980年代)

これは、当時はかなり難しいことだったのではないか。まず、本体(ウイルスやその症状)がよく分からない時代ですから。

>A「輸血・産時大量出血など経験者への、
>“B型C型”肝炎検査の十分な推進、および
>医療・社会的支援策」(遅くとも2000年代)

これは、一定程度、国を責めることはできるかと思います。ただ、厚労省のほうに施策を講ずるための判断材料となる情報が集まっていたか、という点がありますが。情報が少なかったとすれば、医療従事者の責任もあるでしょう。

あと、技術的なことですが、後のエントリに出てくる内容についてのリンクもはっていただくと、読むほうはより理解できると思います。このエントリと追記のリンクとか。
北村健太郎
2008/02/11 21:03
> 当時はかなり難しいことだったのではないか。
 これについては、専門的になりすぎるので記事からは省きましたが、僕は以下のように考えました。

1977年のFDA承認取り消しは、確かに「B型肝炎リスク」を考慮したものだった。しかし、当時は「非A非B肝炎」も認知されていた。
 この状況で、「B型に未対策」というのは承認取り消しの理由として十分だが、「B型に対策済み」というのは承認を継続する十分な理由にはならない。「非A非B」リスクが残っているからだ。(FDAは「非A非B」リスクを考慮するまでもなく承認取り消しという結論が下せただけ)
 日本国は、承認を継続するなら「非A非B」対策も確認しなければならなかった。しかし当時、それは技術的に不可能だった。
 ならば、承認を継続するにしても、そのリスク残存の恐れと想定される最悪の事態は周知されるべきであった。(肝炎の一部が重篤化することは、それがC型と特定されていなかっただけで、当時知られていないわけではなかったのでは?)
birds-eye
2008/02/12 21:59
> 判断材料となる情報が集まっていたか
 「情報」は、例えば検査の実施数や、輸血経験者ごとの検査歴などかなと理解しました(間違っていたらすみません)

 リンクのこと、了解しました。ご指摘ありがとうございます。
birds-eye
2008/02/12 22:06
> 当時は「非A非B肝炎」も認知されていた。

その「存在」は認識されていたでしょう。ただ、症状の重篤性について、専門医だけでなく、一般医も含めてどれだけ「共通認識」となっていたか、という点です。

ここでいう「情報」は、birds-eye さんが書かれたことは基本データとして、患者の症状などの「事態の切迫性」を判断する情報、感染者全体を把握する疫学的情報などを指します。
北村健太郎
2008/02/13 11:21
 1972年に難治性肝炎の研究班が旧厚生省に設置されていることから、国は重篤性を認識していたと僕は考えています。研究班の実態を調べていないので、間違っているかもしれませんが…

 一般医に重篤性の認識はなかったと思います。でも、専門医は少なくとも「肝炎の一部に重篤化のおそれが指摘されている」くらいは認識できたのではないでしょうか? その認識を、厚労相の研究班は、「可能性の一つ」として一般医に周知させるべきだったのではないか、というのが僕の考えです。

 「情報」についての補足、ありがとうございました。
birds-eye
2008/02/14 00:23

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