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zoom RSS 薬害肝炎まとめ 3.弁護団も「正義」ではない

<<   作成日時 : 2008/01/26 18:44   >>

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当たり前のことですが、
弁護団は「原告の利益」を代弁する立場です。
僕たちは、自分自身のために、
彼らの言い分も慎重に聞き分けなければなりません。


◆ 薬害肝炎まとめ 目次 ◆

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(追記)
このエントリーは、「科学に責任を持つ市民のブログ」の理念にもとづいて書かれています



 これを読まれている方は、おおむね「国と製薬会社は悪かった」という意見に同意されるのではないでしょうか? すくなくとも、「全く悪くない」と考える方は少ないでしょう。

 しかし、だからといって「弁護団が全て正しい」とは限りません。
 僕たちがよりよい社会を築くためには、僕たち自身がその点を踏まえて、責任を持ってこの薬害肝炎問題を検討しなければなりません。

◆ ◆ ◆

 僕たちは、とかく簡単な構図を求めてしまいがちです。
 水戸黄門が悪代官を裁くように、裁判所が機能することを求めてしまいます。
 しかし裁判はそんな一方的に判断できるほど単純なものではなく、まして薬害肝炎問題は医療の限界も関わってくる複雑な問題です。

 裁判は、いわばディベートです。自説を通すために、あらゆる手だてを使って審判者(裁判官や、ときに国民)を説得するものです。
 有利な事実は誇大に言い、不利な事実は隠し、無理難題でも取りあえずは言ってみる…
 勝つためには何でもする。それがディベートのセオリーです。

 政府の隠蔽体質がとやかく言われますが、裁判で争う上である意味それは当然のことです。
 そしてそれは、原告弁護団にしても同じことなのです。これは非難されるべき事ではなく、むしろ弁護士の本分とも言えます。

 それを、冷静に問題を振り返る上で、僕たち市民は理解しておく必要があります。
 政府も原告弁護団も、「完全な正義」ではないのです。

◆ ◆ ◆

 弁護団のそんな姿勢が端的にあらわれている例を紹介します。

 薬害肝炎の政府責任を追及する上で、「米国FDAは同じ血液製剤の承認を取り消した」という事実が争点の一つとなります。厚生省もその時点で予防策がとれたはずだという主張です。
 この問題ではFDAの関係者が原告側証人として裁判に出廷しており、弁護団ホームページではその尋問内容が非常に詳しく紹介されています。
  『2.薬害肝炎訴訟の証人はどういう人?』
   薬害肝炎訴訟 リレーブログ

  『二重の負け犬』
   古賀克重法律事務所ブログ版
 (元FDAでアメリカにおけるフィブリノゲン製剤の承認取り消しに関与したバーカー博士は)3時間に渡る尋問の最後にはこう証言しました。
 「フィブリノゲン製剤では、肝炎感染の危険性が極めて高かった。一方、フィブリノゲンが必要な症例は希であるし、むしろDICにおいてフィブリノゲンを投与することは危険であると指摘されていたのである。」
 「フィブリノゲン製剤は、有効性と安全性の両者について重大な欠陥を有していた。この製剤は、二重の負け犬なのである。」

 『二重の負け犬』より抜粋

 ところが、この「FDAの承認取り消し」という論点について、国側から有力な反論が出されています。「FDAの取り消し理由はB型肝炎の危険性だった。しかし、B型肝炎は日本の製剤では対策済みだったから、承認取り消しをしなかった。よって、C型肝炎の薬害予防とは関係ない」というものです。
 当然、国側は証人の反対尋問でその点を問いただしたはずです。また僕たち市民としても、その主張に対する弁護団の反論を知りたいものです。

 ところが、翌日に行われた国側反対尋問についての弁護団の記事は、わずかに次のような内容が書かれているだけです。
 9月1日13時から18時ちかくまで、東京地裁大法廷において、昨日に引き続きバーカー氏の尋問が行われました。
 本日は、国・企業による反対尋問でした。
 その結果は、尋問終了後のこのバーカー氏の笑顔を見れば明らかです。
(この後に写真が続く)

『バーカー反対尋問』 古賀克重法律事務所ブログ版より抜粋


 このように、自分に有利な事実のみを記述する姿勢が、弁護団リレーブログの薬害肝炎解説記事、および弁護団公式ホームページ全てにわたってみられます。

◆ ◆ ◆

 重ねて書きますが、僕はこのような弁護団の姿勢を非難するつもりはありません。
 裁判をディベートとしてとらえるならば、弁護団のこの姿勢は至極妥当で、むしろ優秀であると言えます。

 僕が言いたいのは、これが「裁判」というシステムが本来的に持つ問題で、そのため「裁判による解決」からはたくさんのゆがみが生じてしまった、ということです。
 そして、僕たちが市民の立場から薬害肝炎問題を検証するには、その点に細心の注意を払う必要があるということです。

◆ ◆ ◆

 裁判によって解決を図ったため、僕は薬害肝炎の解決に次のようなゆがみが生じてしまったと考えます。

 弁護団は「一律救済」に固執しました。政府の肝炎対策を引き出すためだけなら、被害の一部に対して責任を認めさせれば十分だったはずです。しかし、勝敗の構図の中でこの判断が行われませんでした。

 政府の非を鳴らすため、弁護団の主張からは「医療の避けられないリスク」という観点がほとんど発信されませんでした。
 自分に不利な主張は行わないのですから、当然です。

 裁判に当たっては、弁護団が原告を選ぶという逆立した構図が生じました。血友病などの患者は原告に加わらないよう、弁護団が決めました。ウイルス性肝炎患者の方からは「弁護士が薬害を定義するのは横暴だ」という批判も出ています。
  『薬害を定義するのは誰か』 出血大サービス赤札日記
 これも、確実に訴訟に勝つために行われたことです。

 そしてその選ばれた原告に与えられた数千万円規模の補償金は、他のウイルス性肝炎患者と比べて明らかにバランスを欠くものとなってしまいました。投薬証明が叶わなかった方々が医療費補助しか受けられないのとは比較できない額です。
 補償額に応じて弁護士の報酬が決まり、また法律論では「証明できたかどうか」がこれほどまでに重要視されてしまうからです。

 一律救済を叫びながら、その範囲は常に曖昧にしか発信されませんでした。公式ホームページでは「全ての肝炎患者救済」を掲げながら、和解の最終局面では「投薬証明できた患者に限る」と政府に言いました。
 これも、裁判の勝敗の構図においてはやむを得ないことです。


 そして何より、これらの経過から国民があらぬ誤解を抱いたことを僕は危惧します。
 「医療に間違いがあってはならない」という誤解です。

 問題は、「防げた被害を生じさせてしまった」ことでした。
 「被害が生じたこと」そのものではありません。


 その点が、裁判の構図の中で誤解されたことを、恐れます。


 そのような誤解をしないために、僕たちは弁護団の立場を冷静に認識する必要があります。

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あき様へ
私、アイスゆずは、「薬害肝炎問題」にとても関心があり、何度も<白鳥一声>の管理人様に議論をしかけました。そちらの管理人様は、私の問いかけに答えて下さっただけなのです。また、そちらの管理人様は、以前から今回の和解について問題を指摘しておられ、もっと広く多くの患者が救済される方法を取るべきだったとおっしゃっていました。私の方が、「今回の和解は仕方がなかった」と言っていたのです。<白鳥一声>をよくお読み頂けば、「もっと広く、公平に、多くの方を救済するべきだ」と書かれていることが、お分かり頂けると... ...続きを見る
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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
実は、低DICに対しフィブリノーゲン値を保つように血液製剤投与を行うのは今もやられている治療です。

<DICの患者は最終的には多量の血液製剤を投与される。それらの必要性・有効性を示すエビデンスは逸話的なもの程度に過ぎないにも関わらず。血液製剤補充療法の主たる目的はフィブリノーゲンの補充である。この目標を達成するためにクリオプレシピテート投与が最善である。1単位に約250mgのフィブリノーゲンが含まれ、少なくとも100-150mg/dlまで血中フィブリノーゲン値をあげるようにクリオプレシピテートを投与する。
無菌的な濃縮フィブリノーゲン製剤はいまだアメリカにおいてはまだルーチンな治療には使えない。>
Wintrobe Clinical Hematologyより

立木 志摩夫
2008/01/27 11:27
注釈

・フィブリノーゲンのみあげても仕方がないという意見がある
・フィブリノーゲン投与はDICを悪化させる危険があるという意見もある
・今の日本ではクリオプレシピテートは使えない
・日本では主にFFP(新鮮凍結血漿)が使われる
・ただしFFPの主目的はAT3という因子の補充であり、FFPだけでフィブリノーゲン値を保つことは難しい
立木 志摩夫
2008/01/27 11:36
 血液製剤の有効性と使用の現状についてのご指摘ですね? DIC=播種性血管内凝固症候群かと思います。ご指摘ありがとうございます。

 …ちょっと理解に自信がないので、間違っていたら教えていただけますでしょうか?
 「フィブリノゲン製剤の産科DICへの使用は禁止されたけど、その他の血液製剤(つまりFFP)は未だ投与されており、それはフィブリノーゲン値を保つために必要なことだ。しかし、FFPはその役を十分に果たせず、またより有効なクリオプレシピテートは日本では使えない。
 しかし一方ではフィブリノーゲン値を上げるためにフィブリノーゲンを直接投与することには問題あるという意見もある」
 という事で合っていますでしょうか?
birds-eye
2008/01/27 13:23
 この連載記事を書くに当たっての僕の理解は、フィブリノゲン製剤の有効性については「当時は専門家の間でも議論があり、一概にどちらと決めることはできなかったのでは?」というものです。
 だから、FDAの決定に日本が倣うためには、(産婦人科領域の現場が使用継続を望んでいた以上)「血液製剤の危険性」という条件が併せて必要で、それを棄却する十分が理由があったのなら、政府の判断は責められないと考えています。(B型肝炎不活化のためのBPL処理が「十分」だったかどうかは別に議論されなければなりませんが。)
 ただ、当時からフィブリノゲン製剤の有効性を明確に否定できる状況にあったのなら、この話は変わってくると思います。

 この点はこれから書く連載4回目で取り上げるつもりです。もし間違いなどがございましたら、どうかご指摘いただければ幸いです。
 よろしくお願いいたします。
birds-eye
2008/01/27 13:26
フィブリノゲン製剤は先天性低フィブリノゲン血症以外に使えないことになっていますが、DICに対して使用する理由はあるということですね。
もちろん有効性の証明はされていませんが、症例を選べば有効である可能性が高いと思います。
立木 志摩夫
2008/01/29 23:53
 立木さん、ありがとうございます。
>DICに対して使用する理由はある
 そうなんじゃないかな、という印象はいろいろな文献から受けていたので、それが間違いではなさそうなのでホッとしました。
 やっぱり、情報ソースがWikipediaとかばかりだと不安がありますので。

 医学の知識は、僕はこれから悪戦苦闘して身につけていかなければなりません。今春からの医学部入学で、まだ教科書もろくにそろっていない状態です。
 そんな状態で医学の記事を書くのも怖いのですが…(苦笑) でも逆に、ゆっくり時間がとれるのも今くらいなものだと思っています。入学までに、この薬害肝炎問題をサマになるところまでまとめられればいいなと思います。
 立木さんにいただいたようなご指摘は、そんな状況なので非常に参考になりました。重ねてお礼申し上げます。
birds-eye
2008/01/30 19:58
一律救済が決まった時は!悔しくて腹立たしい気持ちで一杯になりましたよ!散々活動したのも弁護団には今までの協力ありがとうございましたと言われ!弁護団は提訴出来ない人間を最初から良いように利用したのと?思わせるぐらいに提訴出来ない人間に対しては冷たかった五年間だったから!だったらなぜ?最初から提訴出来ない人達の保証はしてやれないし原告になれたほんの一握りの千人の為だけど協力してと訴える事をしなかったのよ!今回の事で一円の保証もされないのに保証されるんでしょう良かったねと言われる気持ちがわかりますか?
あき
2008/02/07 00:33
あき様へ
私は、アイスゆずと申します。別のブログの管理人です。コメントを読ませて頂きました。私のブログ「誰に投票する?」で、あき様へのメッセージを書かせて頂きました。どうか、お読み下さい。
「誰に投票する?」
http://39774186.at.webry.info/
(上に、トラックバックも送りました。)
あき様へ アイスゆず
2008/02/07 04:40
あき様へ
私、アイスゆずは「薬害肝炎問題」に関心があり、何度もこのブログの管理人様に議論をしかけました。ここの管理人様は、私の問いかけに答えて下さっただけなのです。どうか私のブログのメッセージをお読み下さいますようお願い致します。
あき様へ アイスゆず
2008/02/07 04:54
 あきさん、ご意見ありがとうございます。投薬証明ができなかった方、第8製剤で感染された方、予防注射の使い回しで感染された方、先天性疾患を理由に除外された方、これらの方々が今回の決着でいちばん無念だっただろうと思います。ご心中、いかほどだろうと思います。
 いろいろなゆがみのあった今回の決着を、どう肝炎被害者の方全体への支援につなげていくか、それが僕たち市民の責任になるのだと思います。ご意見を心に刻み、今後の国の対応を見張っていこうと思います。

 今日の記事に、あきさんのコメントの一部を抜粋させていただきました。よろしければ、そちらもごらんいただければ幸いです。
birds-eye
2008/02/07 23:48

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