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zoom RSS 薬害肝炎まとめ 1.「薬害」とは何か?

<<   作成日時 : 2008/01/26 16:45   >>

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「避けられたものこそが≪薬害≫だ」


◆ 薬害肝炎まとめ 目次 ◆

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(追記)
このエントリーは、「科学に責任を持つ市民のブログ」の理念にもとづいて書かれています



 そもそも、「薬害」とは何でしょうか?
 それはなぜ問題で、どうすれば「解決」する事ができるのでしょうか?


 先天性無フィブリノゲン血症に対する治療として血液製剤を投与され、それでC型肝炎に感染された方が、「薬害」認定のゆがみを訴えておられます。
  『薬害を定義するのは誰か』
   出血大サービス赤札日記


 同じ血液製剤を投与されても、血友病患者は薬害ではないのか?
 同じ血液製剤を投与されても、エイズ感染なら薬害なのか?
 薬害か否かは、政治的な駆け引きや裁判の勝算で決まるのか?

 そのようなことが書かれています。

 そもそも、「薬害」とは碁石の白黒を分けるほどきれいさっぱり分別できるものなのでしょうか?
 この人は薬害だ、この人は薬害ではない、その中間はない、とデジタルに分けられるものなのでしょうか?

 そこからまず考えなければならないと、僕は考えます。

◆ ◆ ◆

 僕たちが「薬害」という言葉を定義したいのは、憎むべき対象を明確にし、その撲滅のために力を尽くしたいからです。
 そのためには「薬害」は全て悪でなければならず、そうでなければ「薬害」という概念は使えない概念になってしまうと思います。

 「悪い薬害」と「仕方がない薬害」というふうに分類できてしまうようなら、前者だけを「薬害」と呼んだ方がいい。
 そういうことです。


 どうして僕がこんなことをあらかじめ断るかというと、「薬害」と「副作用」を混同したくないと考えるからです。


 副作用は、いわば薬の望ましくない作用のことですが、薬を飲むときはそのリスクを甘受しなければなりません。
 薬と毒は紙一重で、そしてまさに紙一重だからこそ薬の効果が期待できるからです。
 あるいは、どうしても必要な薬効を得るために、その副作用を避けることができないからです。
 それは撲滅できるようなものではなく、だから「薬害」とは分けて考えるべきだと思っています。

 抗がん剤というものは、どこで読んだか思い出せないのですが、「体が耐えられるギリギリめいっぱいの量で、がんを叩く」ものだそうです。
 抗がん剤は、多くの場合かなり強い副作用があるはずです。がん細胞ももとをただせば自分自身の細胞なのですから、そうそう都合良くがん化した細胞だけに効く薬はあるはずもないです。
 正常な細胞さえ殺してしまう薬を、少しだけでもがん細胞に多めに効くよう工夫して、そのわずかな差分でがんだけを死滅させる。抗がん剤を投与するとは、そういう試みのことです。
 当然、正常な細胞を殺してしまうリスクがつきまといます。がんは放置すれば死に至るのですから、そのリスクを背負うしかないのです。
 だから、抗がん剤の「副作用」で死ぬのを、僕は「薬害」とは呼びたくありません。

 今の日本の献血制度は、エイズウイルスの感染リスクを完全には無くせていません。
 感染直後のウイルス保持者を検査で見つけるのは不可能『HIVまめ知識 #17.ウインドウ期(ウインドウピリオド)・感染性ウインドウ期とは何ですか?』 HIV検査相談マップです。そして、感染直後のウイルス保持者が献血を行わないことを保証するためには、供血者の行動を数ヶ月にわたって管理する必要があるでしょう。
 これは、現実的には不可能です。輸血にかかる経費の高騰を招き、それで救える命が失われることの方が多くなるでしょう。
 輸血とは、そのリスクまで考慮した上で、命の危機が差し迫っている場合だけに行われています。
 だから、現行制度のもとで輸血からエイズに感染するのは、「薬害」ではないはずです。

 タミフルの異常行動で飛び降りて死ぬのは、「薬害」でしょうか? インフルエンザの罹患期間を一日だけ短縮するというのは、死ぬという代償を払うほどの効用ではないはずです。
 しかし、タミフルの異常行動は「予見できた」のでしょうか? 臨床試験の段階で報告されていなかったのであれば、そしてその臨床試験の実施に問題がなかったのであれば、異常行動は「予見できなかった」はずです。
 さらに、タミフルを服用しなくてもインフルエンザでは異常行動が生じます。現れた異常行動が、タミフルに由来するものであると、今ある知見で断定することができるのでしょうか?
 医療には限界があり、科学には必ず未知の領域があります。いまタミフルは「異常行動の危険」と「出現が予想される強毒性インフルエンザへの切り札」という功罪両面から判断を待たれています。いまいずれかを選び、将来それが間違っていたと分かっても、絶対の判断など神ならぬ人間にはできないのです。
 だから僕は、タミフルは「薬害」ではないと考えています。


 そして、このようなことを考慮に入れても、薬害肝炎問題は「薬害」と呼べるはずです。

◆ ◆ ◆

 「薬害とは何か?」という問いに、僕はこう考えます。

 「薬が生じた有害な事象のうち、最善を尽くせば防げたものが、薬害だ」
 「防げたはずのものを起こしてしまったことが問題だ」
 「解決のためには、≪再発防止のための深い反省≫と、被害の≪防げた部分に対する補償≫と≪全てへの支援≫が必要だ」


 この考えを、これから記事を書く拠り所としたいと思います。


 血液製剤に由来するウイルス性肝炎は、その全てを防ぐことはできなかったかもしれません。しかし、適切な時期に国が対応していれば、いまほど被害が拡大することはなく、また感染者も症状が悪化する前に治療が受けられたはずです。

 その意味で、全てのウイルス性肝炎患者の方々は、程度の差こそあれ、「薬害」としての部分を持っていると考えます。

 このような考え方をもとに、
  「では、どこまでの被害が薬害なのか?」
  「その再発を防ぐためには、どうすればよいのか?」
を、自分なりに考えていきたいと思います。


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コメント(13件)

内 容 ニックネーム/日時
birds-eye さま

この難しい問題について、真摯に取り組まれたことに敬意を表します。その上で、何点かコメントします。

まず確認ですが、これらのエントリは、いわゆる「薬害C型肝炎訴訟」を中心としつつ、肝炎問題全般を取り扱うものという理解でよろしいですか。それとも、感染経路を限定していますか。これは、議論の範囲を確定させるためです。

肝炎問題全般ないし血液製剤使用(その理由は問わない)であるとすれば、身も蓋もないことですが、そもそも「薬害」という問題設定で論じることができるのでしょうか。
北村健太郎
URL
2008/02/09 15:20
birds-eye さま

> 最善を尽くせば防げたものが、薬害だ

という定義をされていますが、ここで言う「最善」とは何ですか。また、「防げた」とは何をもって「防げた」とするのですか。

> 「薬害」と「副作用」を混同したくない

「薬害」と「副作用」を明確に弁別できるのですか。できるならば、どのような手順で「薬害」と「副作用」を分けるのですか。
北村健太郎
2008/02/09 15:27
北村さま

 お越しいただいてありがとうございます。「現代思想」の北村さまの記事は、とても興味深く拝読させていただきました(近日中にこちらでご紹介・感想を書かせていただきたいと思っています)。
 コメントいただけるとのこと、とてもうれしいです。よりよい記事にしていくため、至らぬところはどんどん直していきたいので、ご指摘いただければ幸いです。

>「薬害C型肝炎訴訟」を中心としつつ、肝炎問題全般を取り扱う
 はい、その通りです。感染経路は限定していません。

>「薬害」という問題設定で論じられるか?
 以下の二つの理由より、論じられる(論じたい)と考えました。
@不可避だった肝炎感染にしても、国がもっと早く対策していれば、被害は軽減できたはず。その「差分」は≪薬害≫と呼んで良いと考えるから。
A専門家の認識としての≪薬害≫はともかく、一般の方々は「肝炎は全て薬害」と考えている節がある。そのような読者を対象に、どこまでが≪薬害≫と呼ばれるべきかを発信したいから。
birds-eye
2008/02/09 15:39
 あ、申し訳ありません。続きがあるとは知らず、はじめのコメントにお返事書いてしまいました。
 しばらく待ってから、二つめ以降のお返事を書かせていただきます。
birds-eye
2008/02/09 15:42
>「薬害」と「副作用」を明確に弁別できるか?
 まずは、一般の方に医療の不確実性を訴えるため、「副作用というだけでは、非難する理由には不十分だ」と主張したかったのです。
 「副作用」という集合のサブセットとして「薬害」という集合があると理解していますが、これらは概念としては別物なので、「混同したくない」と考えました。

>「最善」「防げた」とは何か?
 当時の医学・科学的水準をもって被害を予見でき、その防止・軽減策が(医療費・社会情勢などの観点から)実施可能であったなら、「最善を尽くせば防止できた」と考えています。(被害を皆無にはできなくても、減らすことができたのなら、その差分は「防止できた」と考えます)
 具体的には第三者委員会が検証すべきこととして、連載4に書きました。
birds-eye
2008/02/10 11:47
>「薬害」と「副作用」を弁別する手順
 上記の考えなので、「薬害」と呼べる「副作用」を定める手順、ということになりますが。
 事後になって、連載4のような検証を慎重に行うしかないと思います。際どいところは判断が曖昧になるかもしれませんが、「明らかに薬害」と呼べる部分も出てくるのではないかと考えています。
birds-eye
2008/02/10 11:51
問題設定、議論の範囲は、以降のエントリに関わりますので、充分に御検討いただきたいと思います。

>感染経路は限定していません。

とすると、当然「輸血」も含みますね。birds-eye さんも既に書かれていることですが、薬事行政だけでなく、血液行政の検討も必要でしょう。

「薬害」概念についてですが、私は事後的な告発概念だと考えています。「薬害」と言ってしまうとき、そこに「後見的」部分が入ってしまうと思います。
北村健太郎
2008/02/11 19:48
なぜなら、「薬害」と判明しているわけですから、どうしても「後見的」部分が入ることは否めないと思うのです。birds-eye さんが

>当時の医学・科学的水準をもって被害を予見でき、

とお考えならば、「薬害」というフレームで論ずることは難しいのではないか、というのが、私の個人的感想です。
北村健太郎
2008/02/11 19:53
> 問題設定、議論の範囲は…
 はい、最善を尽くします(^^)

> 血液行政の検討
 これは、執筆当時は完全に抜け落ちていました。
 それでも、短期間ではとても手に余るので、北村さまのご紹介くださった資料などを紹介するなどで対処したいと思います。
birds-eye
2008/02/12 18:56
> 「薬害」は事後的な告発概念
 …なるほど。
 「後から見てみて被害が大きかったものについて、それを『薬害』と呼んで発生過程を検証する」ということと理解しました。(違っていたらすみません)

 だとすると、「後見的」な部分が入ると同時に、検証した後には「誰も責められない被害」も残るということだと思います。
 「関東大震災は防げなかった(でも軽減できた)」と言うのと同じニュアンスで、「あの薬害は防げなかった(でも軽減できた)」と言う場面も出てくるのだろうと思います。

 もし「薬害」をこのように定めるとするならば、僕はそれでも良いと思います。ただ一般の方には「薬害=誰かが悪い」という認識が広く普及していると思うので、その認識をただす啓発が必要になってくると思います。
birds-eye
2008/02/12 19:09
 僕はこの肝炎問題を、「結果が出た後の視点から、防げなかったものまで安易に責める弊害」という問題意識でまとめました。医療過誤訴訟などにも見られる、この分野の普遍的な問題だと考えています。

 「大きかった被害」を薬害と呼んで、その「避けられた部分」を別の名前で呼ぶか、あるいは「避けられた部分」だけ薬害と呼んで、被害全体は別の名前で呼ぶか。
 いずれがよいのか僕には判断が付きませんが、前者であれば「薬害」という言葉に対する正しい認識を普及させる必要があるし、後者であれば「薬害」認定を慎重にすべきということだと思います。

 さしあたり、この記事では後者の立場を取らせていただきます。今から変えるとなると全部書き直す必要が出てくるので…
 北村さまのご意見も補記させていただきますので、それでご容赦いただければ幸いです。
birds-eye
2008/02/12 19:20
真摯な回答に感銘を受け、情報の追加です。

>感染経路は限定していません。

とすると、もう一つ、院内感染があります。これは、医療を受ける側の感染ではなく、医療従事者への感染です。

これはまた聞きですが、定年退職したある看護師は、C型肝炎が同定される以前の「非A非B型肝炎」と呼ばれていたときに働いており、胎盤などを素手で触ることもあったらしいのです。やっと定年退職と思ったら、C型肝炎による肝細胞がんと診断されたそうです。

私がこの看護師の例を挙げたのは「当時の多くの」医療従事者の認識は「その程度」だったであろうということです。
北村健太郎
2008/02/13 10:20
 北村さま、たびたびのご回答、本当にありがとうございますm(_ _)m

 院内感染については、先日小林さんがご紹介くださった記事が、該当しそうな例でした。タイムリーだったので少し驚きました(笑)
http://www.so-net.ne.jp/vivre/kokoro/psyqa0444.html

> 「当時の多くの」医療従事者の認識は
> 「その程度」
 これは、こと一般医の方々については、僕もそうだろうと考えています。(関連して、連載7でもお返事書かせていただきます)
birds-eye
2008/02/13 22:03

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