「ごめんなさい」という言葉の重さについて。
薬害肝炎について、このたび給付金支給法(以下「薬害救済法」)が成立しました。訴訟により国と和解した「投薬証明ができる患者」(1000人程度)に対して、数千万円の給付金を支払うものです。 しかし、問題となった疾患であるB型・C型肝炎(以下「特定肝炎」)は推定で350万人とも言われており、そのほとんどはこの給付金支給法の対象に含まれません。 これら特定肝炎は
しかし、自民党と民主党で主張が合わず、次期国会に持ち越されることになりました。 この問題については、当ブログでも一度取り上げましたので、詳しくはこちらをご覧ください。 『薬害肝炎: 対立する与野党の違い』 今回の記事では、両党で主張が異なっている 「肝炎対策法で、国の責任を理由に挙げるかどうか」 という点について、 「薬害救済法は、被害に対する国の責任を認める≪補償≫だ」 「肝炎対策法は、被害に対する国の責任によらない≪支援≫とすべきだ」 という僕の主張を論じます。 まず初めに、言葉の整理をしたいと思います。 「賠償」「補償」「救済」「支援」「扶助」etc… これらは、おそらく各分野で厳密に定義された意味合いがあるはずです。医療における新薬の臨床試験に限っても、例えば「賠償」と「補償」には次のような区別があります。 『賠償責任と補償責任』治験ナビ 残念ながら、僕はこの分野の素人です。厳密な言葉の使い分けはできません。 さしあたって、この記事では二つの言葉を次のように使い分けたいと思います。 【補償】 「ごめんなさい」と言って払う金。政府の行動に問題があったと責任を認めて金銭も支払うこと。 【支援】 「応援するからがんばって」と言って払う金。責任を認めず、他の理由から金銭を支払うこと。 次に、「薬害救済法」で補償の対象に含まれる方とそこから漏れた方を整理します。確認しますが、「薬害救済法」は政府が被害を防げなかった責任を認めており、これは≪補償≫です。 【補償の対象に含まれる方】 1)止血剤として血液製剤を投与され、その投薬証明ができた方 ※止血剤として血液製剤を投与することが、血友病などのために投与することと比べて、(その当時からも、いくらか)有効性に疑問が持たれていたことにご留意ください。 【いくらか】=(後天性低フィブリノゲン血症は血液製剤の適応に含まれていなかった) 【補償対象に含まれない方】 2)止血剤として血液製剤を投与されたと思われるが、 その投薬証明がかなわなかった方 3)血友病などの治療のために血液製剤を投与された方 4)血液製剤の投与が無く、輸血により特定肝炎に感染した方 5)予防注射で、注射針の使い回しにより特定肝炎となった方 6)医療行為によらず特定肝炎にかかった方 肝炎対策法は、これら2〜6についてその治療(インターフェロン療法)を手助けするものです。 それでは、ここで当初の問題 「肝炎対策法は、これらの患者を≪支援≫すべきか? それとも≪補償≫すべきか?」 を考えたいと思います。 僕は、肝炎対策法は≪支援≫とすべきだと考えます。 2〜6の中には、今後の医療行政を考える上で、政府が責任を認めるわけにはいかない症例が多く含まれていると考えるからです。 当時の医療水準と照らし合わせて。 血友病に対する血液製剤の投与や、大量出血に対する輸血は、肝炎のリスクを考慮しても生命維持のためには必須でした。それを行わないという選択は、患者さんの側も望まなかったはずです。特にC型肝炎の危険性が十分に解明されていなかった当時においては、これらの処置は妥当な医療行為でした。 今の医学常識から当時の医療行為を批判し、またそれに対して行政が責任を認めることは、医療および医療行政を崩壊させます。未来のことに置き換えて考えてみてください。いま輸血する必要がある患者に対して、将来見つかった問題で責任を問われるならば、医師や厚労省はどうすればよいのでしょうか? この点については、次の記事も読んでいただければと思います。 『医療崩壊: この国の医療をむしばむもの』 好きではない言葉をあえて使います。 医療の限界が引き起こした避けられない被害に対して、政府が責任を認める≪前例≫を作り重ねてはならないのです。責任範囲の妥当な原則に則らない安易な補償は、まるで滑りやすい坂を転がり落ちるように、初めの例が別の補償を次々と生じ、いずれ国の医療費をパンクさせると考えます。 医療によって引き起こされた避けられない被害は、他の全ての理不尽な病苦と同じように、患者さんが自分の運命として引き受けなければならないことだと考えます。 しかし、この解決の方法で一番辛い思いをする方々がおられます。 「血液製剤による感染が限りなく疑わしいのに、投薬証明が得られないから補償が受けられない」方々です。 これらの方々について、投薬証明ができないのは個人の責任ではありません。法的な保存期間が過ぎ、医療機関が診療記録を破棄していることが理由です。 しかし投薬証明が得られた方が数千万円の補償を得られるのに対して、その待遇はあまりに違いすぎます。 しかも「肝炎対策法」は、これら肝炎が重篤化した肝硬変・肝がんに対しては何ら支援を行いません(自民党案の場合)。彼らは『政府の責任が極めて疑わしいにもかかわらず』他の肝硬変・肝がん患者と同じに扱われ、大変な医療費負担を強いられます。 僕は、これらの患者は「肝炎対策法」ではなく、「薬害救済法」の枠組みの中で補償が行われるべきだと思います。例え投薬の≪証明≫まではいたらなくとも、その「疑わしさに応じて(*)」給付金の何割かを支払うか、あるいはインターフェロン療法や肝硬変・肝がん治療の上積み支援を行うべきだと考えます。 幸い、この「薬害救済法」の成立に当たっては、これらの方々にも配慮する付帯決議が行われました。成立したばかりですが、与野党とも修正することには(少なくとも次の総選挙までは)反対しないでしょう。 これらの方々は、いまから国民の理解と政府の補償を訴えていかなければならない方々です。その訴えを「肝炎対策法」に向けるよりは、「薬害救済法」に向けることを僕は望みます。その限りにおいて、当ブログはできる限りの賛同表明を行います。 (*) 僕がこの点について厳しめに留保をつけていることは、どうかご理解下さい。補償されるべき人が全て補償されることを望みますが、投薬疑惑を十分に補強できなかった場合にはそれも叶わないかもしれません。それは、日本の格安の医療制度を考えれば仕方がないと考えています。 以下のような問題も、どうか配慮いただければと思います。 『医師の記憶なんて・・・』ヤブ医者ブログ この点についての僕の考え方は、以下のようなものです。 医療行為を受け入れるとは、自分が医療事故の犠牲者となるリスクまで受け入れることだと考えます。
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| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|---|
副作用と薬害の違いについて
下記のブログでC型肝炎の問題について取り上げていて、その記事のコメント欄に書き込み、ちょっと議論したりしたのだけど。 その議論で、改めて考えたことを、整理する意味で書きとめておきたい。 ...続きを見る |
地球が回ればフィルムも回る 2008/01/23 02:26 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
初めまして。 |
kusukusu URL 2008/01/21 01:39 |
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kusukusu 2008/01/21 01:40 |
あと、血友病の場合はまた難しい問題ですが・・。 |
kusukusu 2008/01/21 02:16 |
kusukusuさん、ご意見ありがとうございます。鋭いご指摘と問題提起の数々に、驚くやら慌てるやら(笑)です。記録映像を手がけておられるとのこと、さすがだなと思いました。 |
birds-eye 2008/01/21 18:42 |
ただ、これは僕も自信がない考えなので、問題提起として。 |
birds-eye 2008/01/21 18:44 |
呼びかけ、というなら各自治体の保健機関はしつこいくらい「検査を受けろ」と呼びかけていたかもしれません。肝炎の検査費用は二千円程度らしく、それがネックで検査できなかった人が多かったとも思えません。昔の輸血が危なかったというのはそれなりの関心を持っていれば耳に入ってくる情報で、それにも関わらず検査に行かなかったのは本人の健康管理の責任かもしれません。 |
birds-eye 2008/01/21 18:46 |
注射器の使い回しについては、実はもう最高裁で被害者が勝訴しています。補償に含まれなかったことを問題視する報道もあり、それは当を得ているとも思うのですが、投薬証明と違い「注射針を使い回していた証明」を行うのが難しいのかもしれません。 |
birds-eye 2008/01/21 18:50 |
血友病のことや、薬害エイズとのかねあいについては。 |
birds-eye 2008/01/21 18:56 |
丁寧な返信、有難うございます。 |
kusukusu URL 2008/01/21 19:51 |
お二人のコメントがすごく勉強になりました。 |
アイスゆず 2008/01/21 21:30 |
うわっ、すみません! 決してkusukusuさんを責めるつもりで書いたのではありませんでした。薬害エイズの時に何もしていなかった僕がどうこう書けるようなことでもないのです… |
birds-eye 2008/01/22 21:19 |
あ、kusukusuさん、追伸です。 |
birds-eye 2008/01/22 21:26 |
はじめまして、アイスゆずさんの紹介でやって来ました。 |
うろうろドクター URL 2008/01/22 22:06 |
うろうろドクターさん、お越しいただいてありがとうございます。 |
birds-eye 2008/01/22 22:25 |
(続き) |
birds-eye 2008/01/22 22:25 |
いえ、別に自分が責められているとか、思ったのではなくて、たしかに抜けているところがあったな・・と思ったので。 |
kusukusu URL 2008/01/23 02:29 |
これは、重ねて失礼してしまいました… すみません。 |
birds-eye 2008/01/23 20:12 |
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