科学的データを扱うときは細心の注意が必要です。
当ブログで最近執筆した二つの記事について、その論拠としたデータに深刻な疑義が示されています。そのことをこちらに示すと共に、現状での僕の認識も示します。 ■ 薬害肝炎についての弁護団主張 (主張の内容) 「特定肝炎のインターフェロン療法を国が全額負担することにより、3兆円の医療費削減が実現する」 『弁護団の提言 ―命の救済と3兆円医療費削減のために―』 薬害肝炎訴訟全国弁護団ホームページ(Web魚拓・画像) (疑義の内容) 「弁護団は国の負担を過小に、医療費削減額を過大に見積もっている」 『弁護団の提言』ヤブ医者ブログ (関連する当ブログの記事) 『薬害肝炎: 対立する与野党の違い』 (補足および当ブログの見解) この弁護団の提言は、国の負担について国民健康保険の補助分を考慮に入れず、その結果国の負担額を1兆1200億円少なく見積もっています。また、100万人あたり3兆円削減という試算結果を60万人の推定患者にそのまま援用しており、削減できる医療費を1兆2000億円も過大に見積もっています。これらは明らかな間違いであるのに加え、さらにB型肝炎の治療についてもC型肝炎と同じものとして扱っており、その点も提言の信頼度を揺るがせています。 僕は、早急に弁護団がこの間違いを訂正し、それを表明することを望みます。弁護団が市民感情を利用するのでなく、あくまで国民に対して誠実な態度で理解を求めるならば、弁護団は事実に基づいた主張を行うべきだからです。それは自らの過ちに対する真摯な対応も含みます。 ただし当ブログは、この疑義によって「インターフェロン療法補助の医療費削減効果」が全て否定されるものではないと考えます。提言に引用された熊田医師の試算があらかじめインターフェロン療法対策費を計算に入れたものならば、間違いを正しても依然1兆8000億円の医療費削減効果があります。またこの熊田医師の試算以外にも、弁護団は複数の論文を示しており、これらも医療費の削減効果を肯定して(いることになって)います。 よって、当ブログの記事『薬害肝炎: 対立する与野党の違い』は即座に訂正する必要があるものとは考えませんでした。 ■ タミフル異常行動についての厚労省研究報告 (主張の内容) 「タミフルを服用した患者の10%が異常行動を生じ、これは服用しなかった患者の22%よりも低い率だった(ただしこれは予備分析で、結論を出せる段階ではない)」 『タミフル、10代の服用禁止継続 影響なお不明 厚労省』 朝日新聞 2007.12.25 (Web魚拓) (疑義の内容) 「この分析は、タミフルを服用したものとして数えなければならい異常行動患者を服用しなかったものとして数えており、それを修正すると服用したものが16%で、服用しなかった患者の12%を上回っている」 『[タミフル]厚労省解析「異常行動が半減」誤りの可能性』 ライブドアニュース配信(毎日新聞) 2008.01.15 『タミフル薬害: 1万人調査で有意の関連、10歳未満も』 NPO法人医薬ビジランスセンター ホームページ (関連する当ブログの記事) 『もう一つの「薬害」タミフル異常行動のいま』 (補足および当ブログの見解) 指摘されたのは「受診前(やタミフル服用前)に異常行動が発現した患者は、タミフルを服用しなかったものとして扱った」という点です。一見正しいようですが、これだとをタミフルを服用したケースは「服用から治癒まで」の期間で異常行動がカウントされるのに対し、服用しなかったケースは「罹患から治癒まで」の期間全てでカウントされることになるので不公平です。 これは、(僕は疫学調査の知識はほとんどありませんが)この分野での分析手法の初歩的な間違いであるかもしれません。もしそうであれば、たとえ予備分析であろうとも、それを公表した厚労省調査班は不注意が過ぎたと考えます。 ただし当ブログは、この問題を指摘した「NPO法人医薬ビジランスセンター」にも不信感を持っています。この団体こそ「まずタミフル否定ありき」という姿勢があるように思われてなりません。 同団体は厚労省の報告に対してさまざまなバイアス(偏り)の可能性を指摘していますが、それらは全て自説に有利なものばかりで、客観的に検討されたものとは考えられません。特に、
さらに同団体は、「どの程度異常行動が多ければタミフルを禁止すべきか」という検討を全く欠いています。軽度の異常行動が12%から16%に増えるのは、タミフルを全面禁止にするほど重大な問題なのか? ということです。 どんな薬でも、そのリスクとメリットを秤にかけて処方を決めるものです。それはタミフルでも同様です。例えば受験が迫っていれば、一晩のウワゴトには目をつぶってタミフルを服用するという選択もあり得ます。 にもかかわらず、同団体はこの分析結果から即座に「タミフル全面禁止にすべし」と主張しています。この態度こそ、僕には患者の利益を超えた政治的意図を感じます。 当ブログは、記事『もう一つの「薬害」タミフル異常行動のいま』について、今の段階で訂正するかどうかを留保します。 厚労省の研究報告は、いまの時点で「タミフルが異常行動を増やすかどうか、どちらともいえない」というものです。明らかなのは、例え増やすものだとしてもそれは数%程度のもの(軽度の異常行動で)ということです。 どちらか分からないのであれば、時間をかけて検討すべきです。「禁止措置を解除すべし」という主張は早急に過ぎたかもしれません。ただし、研究報告が「タミフル処方の有無で異常行動は増えも減りもしない」というものであったのなら、僕はやはり「禁止措置を解除すべし」という主張を行いました。その点を踏まえ、どこまで訂正するか考えたいと思っています。 したがって、後日改めてこの問題を取り上げたいと思います。 ■ 謝罪 今回指摘された疑義について、このような問題をはらむ資料を安易に論拠として取り上げたことを痛恨に思い、謝罪の意を表します。 これら二つの疑義は、的を射たものであったと同時に、発表されていた(そして僕が記事を書くに当たって検討の材料に含んでいた)資料から指摘することができるものでした。それにもかかわらず情報源を過信した僕にも責任があります。 僕は、仮にも研究の道を一度は通り、自分の論文も持っている人間です。いわば専門家サイドの立場として、このような過ちを犯したことは軽率だったと考えます。 以後、取り上げる資料は時間の許す限り十分に検討し、疑問点があればその旨留保を怠らないようにしたいと考えます。申し訳ありませんでした。 なお、これらの疑義を教えて下さった以下のブログに深く感謝いたします。 『弁護団の提言』ヤブ医者ブログ 『厚生労働省 インフルエンザ治療薬「タミフル」の服用と異常行動に関し、厚生労働省研究班が、タミフル服用患者は異常行動が半減したとの内容で先月公表したが、解析が誤りだった可能性が高いことが分かった。厚労省またやってしまったか??』 チョクのブログ
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薬害肝炎訴訟、原告と厚労相が基本合意書に調印
薬害C型肝炎集団訴訟の原告団と弁護団は15日午後、国との和解内容について取り決めた基本合意書に調印した。 合意書には、国がこの問題についての検証を第三者機関を設けて行うほか、肝炎の恒久対策や薬害再発防止策について国と原告側が継続的に協議する場を設けることが盛り込まれた。 調印後、原告らは福田首相と2度目の面会を果たし、改めて謝罪を受けた。 これにより、2002年10月以来、全国5地裁・5高裁で国と製薬会社を相手に係争中の訴訟は順次、国との和解手続きに入る。製薬会社は態度を明... ...続きを見る |
☆shaniner☆,【過去記事に関する... 2008/01/16 22:51 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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思いつめて潰れないようにしてくださいね。根拠が具体的であれば、記事内容に問題ないと思いますよ。他の情報を得たときに新しく気づいたことを書けばよいかと。一般の人は問題意識すらないのですから。bird-eyeさんの誠実さが伝わってきます。 |
一般人 2008/01/18 17:51 |
ありがとうございます(^^;) たぶんそんな繊細さは持ち合わせていないので、ご心配なく。過分なご評価、恐縮です。 |
birds-eye 2008/01/18 22:17 |
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