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薬害肝炎を考えるなら、僕たちは、 この問題も頭の片隅に置いておかなければなりません。 これが、医療が僕たちに突きつける「選択」です。
タミフルが異常行動を増加させず、むしろ抑制することが「示唆」される研究報告が出た一方で、厚労省が10代へのタミフル使用制限を続けることを決めたニュースです。(※公正な記述のために: 記事の内容を端的に表現するため、あえて非中立的な書き方をしました。「示唆」は「証明」ではなく、結論が覆る可能性があることにご留意ください。) 『タミフル、10代の使用制限継続 影響なお不明 厚労省』 朝日新聞 2007.12.25 (Web魚拓) 『タミフル異常行動 制限維持、不安消えず』 イザ!配信(産経新聞) 2007.12.16 厚労省は、10代へのタミフル使用を解禁すべきでしょうか? それとも使用制限を続けるべきでしょうか? それが問題となっています。 今回、僕の主張は最後まで取っておき、この問題を考える材料を一つずつ提示していきたいと思います。ただし、僕自身の考えが定まっている以上、一方の立場に偏った記述になるかもしれません。その点を割り引いて読んで下さるようお願いいたします。 この記事をこれから読んで下さる方は、次の問題も念頭に置きながら、一緒に考えていただければ幸いです。
朝日新聞などが報じられた研究報告は、約一万人の患者を対象とした大規模なものです。報じられた研究報告の結果をまとめました。
「危険行動」とは、飛び降りなどにつながる重大な異常行動で、 この項だけこちらの記事より補足しました。) 研究班長の広田良夫・大阪市立大学教授はこの結果を「あくまで予備的な分析で、結論を出せる段階ではない。さらに検討しないといけない」としています。とはいえ、この結果はタミフルが異常行動をむしろ抑制していることを示唆しています。 タミフルを服用した患者は服用しない患者より『異常行動』の発生率が低く、これは統計的に意味のある差でした(有意確率P≪0.001)。『危険行動』は、朝日・イザ!両紙とも「差はなかった」としていますが、これは症例数が少なく統計的に「差があるとまでは言えない」と結論されたのだと考えられます。僕の方で確かめてみても、危険行動に関する発生率の違いは、たしかに統計的に意味があると見なせるか微妙なものでした(有意確率P≒0.01)。 さらに、タミフルの異常行動疑惑について、もう少し考える材料を示したいと思います。 医療問題に詳しい次のブログからの記事抜粋です。 『インフルエンザ患者 「タミフル服用者の方が異常行動少ない」?』 お医者になるのは、大変ですね 飛び降りなど重度の異常行動を起こしたインフルエンザ患者は、2006年〜2007年にかけての流行シーズンに137人いたが、治療薬タミフルを服用していたのは60%で、38%は服用していなかったと調査結果は発表されています。これは、タミフル問題が盛んに報道された昨シーズンの実態を振り返るものです。タミフルが全インフルエンザ患者に対してどのくらい処方されていたか、いま僕の手元に資料がないのですが、異常行動の6割に対してそれほど低い割合ではなかったように記憶しています。(※確証のない記述なので割り引いて読んで下さい) このことを受けて、作業部会メンバーの内山真日本大教授は…(中略)…インフルエンザ脳炎・脳症のリスクの方が考えられるのではないか、と推定しているようです。タミフル問題を考える上で、インフルエンザ自体が脳炎を生じ、異常行動を引き起こしかねないことをもう一度ご確認いただければと思います。 一方で、タミフルが問題だという事を補強する事実もあります。 一方、タミフルとの関連性を支持する意見の一つとしては、未熟な子供は血液脳関門におけるP糖蛋白の発現が乏しく、タミフルが通過してしまうのではないか、という説もあります(実験的に証明したわけではないようですが)。これは、僕が以前にこの問題を紹介したときに取り上げた、朝日記事(二つめ)が報道した研究だと思います。この点はブログ記事『タミフル問題』(新小児科医のつぶやき)がうまくまとめて下さっていますが、要するに「疫学的にはともかく、薬理学的には、起こってもおかしくはない」という事だと理解しました。 最後に、タミフルの薬効について。 タミフルの効果としては、海外臨床試験においてインフルエンザ発症2日以内の投与によって、発熱期間を24時間、罹病期間を26時間短縮した(服用しない場合、発熱は通常3〜7日間続く。服用した場合には2〜6日間継続へ、約1日間の改善)とのことなので、実はそんなに速効作用のあるものではありません。これもブログ記事『インフルエンザ患者 「タミフル服用者の方が異常行動少ない」?』からの抜粋です。インフルエンザの治療に、本当にタミフルが必要なのかどうかも、考えなければなりません。 この一連のタミフル報道で、気になった記述をいくつか抜粋します。 薬害タミフル脳症被害者の会代表で、05年2月、中学2年の長男がマンションから転落死した秦野竜子さん(47)は「厚労省は、因果関係の否定ありきで、都合の良いデータだけ取り上げている気がしてならない。子どもを亡くした私たちは、タミフル服用以外の原因を考えられない」と話した。 けいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫・小児科部長は「これからインフルエンザの流行が本格化する。10代でタミフルが使えないと、受験の時期を迎えて影響が大きくなるかもしれない」と話している。(以上は前出の朝日記事よりの抜粋です) 「厚労省は将来の訴訟リスクを考え、現在の処方禁止を撤回しないはず」と指摘する医療関係者も多い。(これは、同じく前出のイザ!記事よりの抜粋です) 先に取り上げた二つのブログ記事では、医療現場の混乱を憂慮する声も聞かれます。 慎重調査の方針は間違っていないのですが、現場としては困ったもんだと思っています。ただでも忙しい小児科の冬外来の手間ひまに拍車がかかります。インフルエンザの検査をして、診断が付き、そこからタミフルをどうするかで外来がストップします。医師としてタミフルを処方するかどうか聞かないわけには行きませんし、母親(父親その他も含む)も聞かれたところで困惑する人は困惑します。(以上『タミフル問題』より抜粋) 今後、インフルエンザ患者の中でお子さんの場合、親御さんに「処方しますか?」と訊くことになり、服用するかどうかは親御さんの判断になるのでしょうね。医療現場では、さらに混乱することが予想されますが、上記のデータからはどちらにすべきか、とは言えないようです。(以上『インフルエンザ患者 「タミフル服用者の方が異常行動少ない」?』より抜粋) これを読まれて、どう思われましたでしょうか? 問題点を整理すると、以下のようになると思います。
それでは、僕の主張を述べさせていただきます。 厚労省は、現在行われている「原則使用禁止」を「注意喚起」くらいに緩和すべきです。医師は、薬の効用とリスクを慎重に検討した上、必要な場面なら10代の患者に対してもタミフルを処方すべきです。そして、このことで将来薬害訴訟が起こったとしても、それは現時点では予見不可能であるため、厚労省及び医師が「賠償」責任を科せられるべきではありません。 まず、昨期から続く「タミフルと異常行動との関連性」の指摘は、客観的な証拠に欠ける、説得力の乏しいものだったと考えます。以前の僕の記事でも述べたことですが、この指摘は十分に論理的な検討がなされたものとは僕は考えていません。 薬理学的に関連の可能性を示唆する研究もありますが、これは実証されていない以上、説得力に乏しいと考えます。 異常行動が原因の事故で家族を亡くされたご遺族の方が、タミフルに原因を求めることは理解できます。しかし、その科学的な正しさは別の観点から論じられなければならないと考えます。 「タミフルが異常行動をむしろ抑制する」という予備調査の結果は、まだ結論には至らないものの、十分に信頼できるものだと考えます。少なくとも天秤の反対側にある主張が客観的な証拠を欠いているので、相対的にはこちらを重視すべきだと考えます。 インフルエンザが脳炎を生じて異常行動を引き起こすことは、十分に考えられることです。タミフルがインフルエンザの症状を緩和することで、異常行動を減らすことも、十分に考えられると思います。 「タミフルと異常行動の関連性」は社会問題として指摘されていますが、科学的な立場に立ってこれらの事実を冷静に見るならば、現時点でタミフルによって薬害が生じることは予見できないと考えます。(少なくとも、予見可能性は無視できるほど小さいと考えます。) 一方で、僕は10代の子供にタミフルを処方するメリットは大きいと考えます。タミフルは、肺炎や脳症などインフルエンザが重篤化するリスクを減らします。また、受験直前にインフルエンザを患った場合、一日でも早く病気が治ることは非常に重要な問題です。(これは僕自身の経験でもあります。インフルエンザによって、センター試験が受験できませんでした。) もちろん、医師はその効用とリスクを慎重に見極めなければなりません。しかしそれは、医療行為において医師が必ず行っていることであり、何も特別なことではありません。 以上より、厚労省は勇気を持って、タミフルの使用制限を緩和すべきです。客観的に考えるなら、リスクよりメリットが勝るからです。「事なかれ主義」に陥って使用制限を延長すべきではないと考えます。 何かが「無い」ことを証明するのは非常に困難で、できたとしてもとても時間がかかります。それを待ち続けてインフルエンザの被害が拡大することの方を、僕は憂慮します。 制限緩和の決断が下されたなら、僕たち国民は、それを自分たちの決断として受け入れなければならないと考えます。繰り返しますが、科学的な立場から客観的にこれまでの事実を眺めれば、タミフルによる薬害は「予見できない」と考えます。将来その事実が覆ったとしても、現時点での最善の判断は、「メリットがリスクを上回っている」というものだと考えます。 「予見する」とはノストラダムスの予言書ではありません。「誰かが言っていたから予見できたはず」なのではなく、「客観的な証拠からそのことが予測できた」ことが「予見」の条件であるはずです。そのことを、銘記したいと思います。
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◆◆◆ 特集記事≪薬害肝炎≫ ◆◆◆
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白鳥一声 2008/01/13 16:33 |
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チョクのブログ 2008/01/15 11:55 |
【過去記事に関する注意】タミフル厚労省調査に疑義
タミフルの副作用問題について、当ブログの記事が論拠とした調査報告に深刻な疑義が提出されていることを、取り急ぎお知らせいたします。 ...続きを見る |
白鳥一声 2008/01/15 21:29 |
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