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zoom RSS 薬害肝炎問題: 白鳥一声の総括

<<   作成日時 : 2007/12/25 21:56   >>

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医療の引き起こした問題として、
薬害肝炎訴訟から、僕たちは何を学ぶべきでしょうか?

 薬害肝炎問題で、被害者一律救済の政治決断が下されました。
  『福田首相「議員立法で一律救済」表明 薬害肝炎問題』
   朝日新聞 2007.12.23
 (Web魚拓
 重たい医療負担に苦しむ薬害被害者を支援するこの政治決断を、僕は高く評価します。

 薬害肝炎は、医療によって引き起こされた問題でした。その一面には政府の怠慢が被害を生み出した事実があり、しかし他方には医療行為が根源的にはらむリスクの問題があったと考えています。
 この問題は、今回の政治決断で解決ではありません。今後整備される法律の内容にも、僕たち国民は注目し続けなければなりません。
 しかし、ブログ「白鳥一声」として、ここでいちどこの問題についてのまとめの記事を書かせていただきたいと思います。

◆ ◆ ◆

 始めにこの論点について取り上げることをご容赦ください。新聞記事を読み、あるいは他の方々のご意見に触れ、一連の議論でいちばん抜け落ちている視点だと僕が考えるからです。

 薬害肝炎で被害者が補償されるべきなのは、政府が「防ぎえた薬害を生み出したから」です。決して「薬害によって被害を受けたから」ではありません。この点で、今回の政治決断が国民に誤った信念を与えてしまうことを、僕は非常に危惧しています。

 薬害をはじめとする医原性の病気は、医療行為が本質的に生み出すものです。熟練した医師が細心の注意を払ったとしても、予期できなかった副作用を被るおそれが必ず存在します。薬は劇物であり、手術は体を切り刻むことであり、科学には必ず未知の領域があることを踏まえれば、これは当たり前のことです。医療行為に絶対の安全を保証することは誰にもできません。先人たちの試行錯誤の上に築かれた人類の医療技術は、まだそのような高みには至っていません。

 だから、いかにして医療行為の副作用を最小限に抑えるかが問題になるのです。今回の薬害肝炎問題も、問われるべきはその点でした。

 薬害が起こったときにこの点を考慮せず、「薬害だから」というだけの理由で医師や医療行政を責めることは、不当であり、長期的には僕たち国民に弊害をもたらします
 例えば医師は、出血多量で意識もかすむ交通事故の被害者に、長々とインフォームドコンセントを始めるでしょう。輸血の予期せぬ副作用によって自分が賠償責任を問われるなら、そうするより他にありません。
 例えば厚労省は、他国で認可された新薬がその安全性を確かめられるまで、その承認を見送るでしょう。50年待っても「予期せぬ副作用は存在しない」ことなど証明できません。それを待ち続ける間、救える命がいくつ失われるでしょうか?

 薬害肝炎の問題で、原告は線引き救済に最後まで反対しました。その訴えが認められつつあること自体は僕も歓迎します。
 しかし僕は、「初めの一人の被害者から」「すべて一律に」「政府の“責任”を理由に」補償がなされることには反対です。薬害肝炎をさかのぼっていけば、かならずどこかに「予期することができなかった被害」があると考えるからです。それは誰かの責任を問うべき事ではなく、現代医療の限界だと考えます。
 「政府の責任」が一定の範囲(それも広範囲)に認められるべきという主張には賛成します。「政府の責任」の枠外で全ての薬害被害者に公的支援が行われることにも賛成します。しかし、この二つを混同した議論に賛成することはできません。

 原告は一律救済を訴える際に、「国民の命を大切にし、切り捨てにしない」ことを国に求めました。一律救済は命の重さを等しく扱うことだという意見があります。
 しかし、命の重さは、全ての病苦に苦しむ人で等しいはずです。その中で薬害肝炎だけに「特別な公的支援」が行われる理由が争われていたはずです。
 今回の訴訟では、その理由は「政府の過失/怠慢」であったはずです。結果的に一律救済は認められつつありますが、この成果を振り返る上で、他の病苦への配慮も忘れないようにする必要があると僕は考えます。
  『薬害肝炎訴訟の原告・弁護団「大きな一歩」 首相表明で』
   朝日新聞 2007.12.23
 (Web魚拓

 僕は、この論点についての報道の無配慮を批判します。
 原告が「全ての被害者に一律救済」と主張するのは理解できます。被害者の方々はだれよりも苦しんでおり、また医療の専門家でもありません。多くの方が政府の過失により被害を受け、また政治家の不誠実な態度に振り回されました。9割5分の政府過失の中で5分の正当性に配慮するよう、要求するのは酷であると僕も思います。
 しかし報道は違います。中立的な観点から、時には被害者に厳しいことも述べなければならないはずです。薬害被害の窮状を広く報道することも大切ですが、「医療の避けえない副作用」について国民を啓発することも責務だと考えます。
 医療従事者は今、過酷な労働環境の中、医療過誤訴訟の過重な責任追及にさらされています。それが医療崩壊を招く前に、不当な問責を招く「薬害は全て悪」という誤解を晴らす努力を、報道各社に求めます。

◆ ◆ ◆

 今回の薬害肝炎問題を契機として、僕は、「薬の予期できなかった副作用」全般への公的支援が整備されることを望みます。

 先にも述べたとおり、全ての医療行為には副作用の危険が伴います。それは、医療行政及び医療従事者が最善を尽くしたとしても、皆無にはできないと考えます。
 このような副作用によって生じた被害は、国民全体で負担するべきだと考えます。それは「リスクの社会化」という理念に基づきます。医療行為によって稀に起こる薬害が、たまたま不運に見舞われた少数の被害者に過重な負担となってのしかかるよりは、あらかじめその危険を見越して全員が少しずつお金を出す方が望ましい社会のあり方だと考えます。

 このような制度の整備は、例えば「治療記録のない薬害(疑惑)肝炎」や「輸血によるウイルス性肝炎」などにも救いの手をさしのべます。これらの肝炎が救済対象となることを政府は頑なに拒みましたが、それは治療記録が明らかな薬害肝炎に比べて負担が軽いわけでは決してなく、これらの被害者にも同様の公的支援がなされるべきだと考えます。
 僕の提案する制度は、このような予期せぬ副作用に、裁判の負担を追わず、政府の過失を議論することなく、早急に、公的支援を行う途をつくります。

◆ ◆ ◆

 言うまでもないことですが、今回の薬害肝炎に関して、医療行政の反省と再発防止がきちんと行われることを僕も強く望んでいます。以上で述べた議論は、あくまでこの点が十分に行われた上での話でした。

 政府は今後の法整備の中で、自らが負う責任の内容についても検討するようです。
  『肝炎議員立法、来月7日に法案提出へ 自公両党』
   朝日新聞 2007.12.25
 (Web魚拓
 「道義的責任」「解決責任」「救済責任」国民の意識からはかけ離れた多様な政治用語ですが、一律救済が実現されるならば、次に重要な実質的議論は「再発防止責任」です。

 いったい薬害肝炎はどの時点から予測でき、どこまでの被害が防止しえたものだったのか? その時点で必要な対策が取られなかったのは誰(どの時期にどの役職にあったどの個人)の責任で、それを許した行政機構の「組織としての不備」は何だったのか? これらの点を明らかにすることが再発防止につながると考えます。
 外国で危険性が認知されていた薬剤が、国内で回収もされずに使い続けられた責任の所在は十分に明らかになっていません。薬害被害者のリストを入手しながら通知しなかった厚労省の、「責任があるとまでは言えない」という反省も甘すぎます。大阪高裁の和解案が示した政府の「法的責任の範囲」は狭すぎます。
 これらの責任追及が、一律救済が実現された後もきちんと行われるよう、僕たち国民が注目し続けなければなりません。これは、次の総選挙で僕たちの一票の行方を決める問題の一つです。

■ この記事のトラックバック元
  • 『特別救済法案』 誰に投票する?
    薬害肝炎を精力的に取り上げ続けてこられたアイスゆずさんのブログです。政治判断に言及した記事にトラックバックさせていただきましたが、このブログから行かれる方にはここ最近の記事をいくつか読まれることをお薦めします。「命の重さ」を意識した記事がとても訴える力を持っています。
    拙ブログを始め、アイスゆずさんの記事に影響されて薬害肝炎を取り上げたブログもたくさんあるように思われます。その点でも、素晴らしいブログだと思います。
  • 『責任政党と自称したがる責任逃れ政党、自民党 (薬害肝炎被害の責任論)』 村野瀬玲奈の秘書課広報室
  • 『これは、平たく言うと』 かめ?
    以前にも紹介させていただいた村野瀬さんのブログです。あくまで責任を取ろうとしない政府の態度を批判しておられます。同記事からリンクされているgegengaさんの記事にもトラックバックさせていただきましたが、こちらも問題点を端的にまとめられた非常に参考になる記事です。
    一見してこの記事と反対の内容にも思われますが、僕は「95%まで政府が悪い問題の、95%の部分に重点を置いたのが村野瀬さんの記事、5%の部分をクローズアップしたのが僕の記事」だと理解しています。僕も、政府の責任が断固追及されることを望んでいます。
    ただし、僕は町村官房長官の「患者の気持ちに配慮し、責任論を超越して立法することが最も重要だ。」発言にはあえて反対しません。厚労省の反省が甘すぎるので反感を招くのは当然のことですが、「責任を問えない5%」を考慮するとやむを得ない発言であるようにも思われるからです。
  • 『薬害肝炎・原告が国の線引きや責任にこだわるわけ+NSC断念も、超保守勢力が活発に』 日本がアブナイ!
    「左右は関係なく」と謳われる理念が素敵なmew-run7さんのブログです。冷静で理知的な論調は、僕がぜひあやかりたいと思うものです。(※他のスタイルの記事を否定するものではありません。それぞれのスタイルにそれぞれの長所がある中で、あくまで僕が自分自身の記事に望むもの、ということです。)
    この記事では「国の線引き対応が、責任期間に入らなかった薬害肝炎被害者にいわれのない侮辱を与えている」という問題点を指摘されています。たしかに疑ってかかられる被害者の方々の憤りは察して余りあると思います。
    しかし一方で、国民の税金を預かる健全な政府が(今の政府が「健全」と呼ぶに値するかはさておき)、救済範囲に該当しない被害者、特に悪意を持って不正に補償を受けようとする患者を除外する努力をすることは正当であるようにも思われます。
    本来、輸血由来のウイルス性肝炎も「薬害」として何らかの支援が必要だと思います。だから、政府の責任期間を議論せず、僕が記事で述べたような「予期できなかった薬害」全般を支援する枠組みが必要であると考えました。



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村野瀬玲奈の秘書課広報室
2007/12/29 12:22
◆◆◆ 特集記事≪薬害肝炎≫ ◆◆◆
 本ブログ「白鳥一声」は、ただいま≪薬害肝炎問題≫を重点的に取り上げています。以下は、この問題に関連する本ブログのエントリーをまとめたものです。  (※なお、このエントリーは随時更新されます。また特集期間の間は、このエントリーは常に新着記事リストの最上部に表示されます) ...続きを見る
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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
参りました。 m(_ _)m
おっしゃる通り、人の命の重さについて考えるなら、全ての病気を持つ人に同じように配慮するべきだと思います。

トラックバック送りました。
アイスゆず
2007/12/27 19:45
 恐縮ですm(_ _)m
 トラックバック先の方にお返事書かせていただきました。
birds-eye
2007/12/27 23:18
初めて書き込ませて戴きます。
まず論理的、客観的に、しかしながら感情を無視せずに書かれている記事の数々に感服いたしました。
そして薬害肝炎について勉強、理解する上で
こちらのブログが最も参考になり、勝手ながらお礼をさせていただきたいと存じました。
ありがとうございました。

shane
2007/12/29 17:38
 shaneさん、コメントありがとうございます。お返事が年を越してしまい申し訳ありません。
 身にあまるご評価をいただきましたこと、本当にうれしく思っています。

 薬害肝炎の問題については、やはり僕の記事は政府側に偏っていると思います。正当な主張だと思って書いてはおりますが、「当然認められるべき政府の責任」を軽く流しすぎている点はご了承ください。
 この点を補足するため、近日中に新しい記事をアップするつもりです(「総括」と書いたのですが、別の方からリクエストをいただいたもので…汗)。拙筆ながら、今月中旬までには書けると思いますので、そちらも読んでいただければ幸いです。
birds-eye
2008/01/02 23:38

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