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医療の引き起こした問題として、 薬害肝炎訴訟から、僕たちは何を学ぶべきでしょうか?
薬害肝炎問題で、被害者一律救済の政治決断が下されました。 『福田首相「議員立法で一律救済」表明 薬害肝炎問題』 朝日新聞 2007.12.23 (Web魚拓) 重たい医療負担に苦しむ薬害被害者を支援するこの政治決断を、僕は高く評価します。 薬害肝炎は、医療によって引き起こされた問題でした。その一面には政府の怠慢が被害を生み出した事実があり、しかし他方には医療行為が根源的にはらむリスクの問題があったと考えています。 この問題は、今回の政治決断で解決ではありません。今後整備される法律の内容にも、僕たち国民は注目し続けなければなりません。 しかし、ブログ「白鳥一声」として、ここでいちどこの問題についてのまとめの記事を書かせていただきたいと思います。 始めにこの論点について取り上げることをご容赦ください。新聞記事を読み、あるいは他の方々のご意見に触れ、一連の議論でいちばん抜け落ちている視点だと僕が考えるからです。 薬害肝炎で被害者が補償されるべきなのは、政府が「防ぎえた薬害を生み出したから」です。決して「薬害によって被害を受けたから」ではありません。この点で、今回の政治決断が国民に誤った信念を与えてしまうことを、僕は非常に危惧しています。 薬害をはじめとする医原性の病気は、医療行為が本質的に生み出すものです。熟練した医師が細心の注意を払ったとしても、予期できなかった副作用を被るおそれが必ず存在します。薬は劇物であり、手術は体を切り刻むことであり、科学には必ず未知の領域があることを踏まえれば、これは当たり前のことです。医療行為に絶対の安全を保証することは誰にもできません。先人たちの試行錯誤の上に築かれた人類の医療技術は、まだそのような高みには至っていません。 だから、いかにして医療行為の副作用を最小限に抑えるかが問題になるのです。今回の薬害肝炎問題も、問われるべきはその点でした。 薬害が起こったときにこの点を考慮せず、「薬害だから」というだけの理由で医師や医療行政を責めることは、不当であり、長期的には僕たち国民に弊害をもたらします。 例えば医師は、出血多量で意識もかすむ交通事故の被害者に、長々とインフォームドコンセントを始めるでしょう。輸血の予期せぬ副作用によって自分が賠償責任を問われるなら、そうするより他にありません。 例えば厚労省は、他国で認可された新薬がその安全性を確かめられるまで、その承認を見送るでしょう。50年待っても「予期せぬ副作用は存在しない」ことなど証明できません。それを待ち続ける間、救える命がいくつ失われるでしょうか? 薬害肝炎の問題で、原告は線引き救済に最後まで反対しました。その訴えが認められつつあること自体は僕も歓迎します。 しかし僕は、「初めの一人の被害者から」「すべて一律に」「政府の“責任”を理由に」補償がなされることには反対です。薬害肝炎をさかのぼっていけば、かならずどこかに「予期することができなかった被害」があると考えるからです。それは誰かの責任を問うべき事ではなく、現代医療の限界だと考えます。 「政府の責任」が一定の範囲(それも広範囲)に認められるべきという主張には賛成します。「政府の責任」の枠外で全ての薬害被害者に公的支援が行われることにも賛成します。しかし、この二つを混同した議論に賛成することはできません。 原告は一律救済を訴える際に、「国民の命を大切にし、切り捨てにしない」ことを国に求めました。一律救済は命の重さを等しく扱うことだという意見があります。 しかし、命の重さは、全ての病苦に苦しむ人で等しいはずです。その中で薬害肝炎だけに「特別な公的支援」が行われる理由が争われていたはずです。 今回の訴訟では、その理由は「政府の過失/怠慢」であったはずです。結果的に一律救済は認められつつありますが、この成果を振り返る上で、他の病苦への配慮も忘れないようにする必要があると僕は考えます。 『薬害肝炎訴訟の原告・弁護団「大きな一歩」 首相表明で』 朝日新聞 2007.12.23 (Web魚拓) 僕は、この論点についての報道の無配慮を批判します。 原告が「全ての被害者に一律救済」と主張するのは理解できます。被害者の方々はだれよりも苦しんでおり、また医療の専門家でもありません。多くの方が政府の過失により被害を受け、また政治家の不誠実な態度に振り回されました。9割5分の政府過失の中で5分の正当性に配慮するよう、要求するのは酷であると僕も思います。 しかし報道は違います。中立的な観点から、時には被害者に厳しいことも述べなければならないはずです。薬害被害の窮状を広く報道することも大切ですが、「医療の避けえない副作用」について国民を啓発することも責務だと考えます。 医療従事者は今、過酷な労働環境の中、医療過誤訴訟の過重な責任追及にさらされています。それが医療崩壊を招く前に、不当な問責を招く「薬害は全て悪」という誤解を晴らす努力を、報道各社に求めます。 今回の薬害肝炎問題を契機として、僕は、「薬の予期できなかった副作用」全般への公的支援が整備されることを望みます。 先にも述べたとおり、全ての医療行為には副作用の危険が伴います。それは、医療行政及び医療従事者が最善を尽くしたとしても、皆無にはできないと考えます。 このような副作用によって生じた被害は、国民全体で負担するべきだと考えます。それは「リスクの社会化」という理念に基づきます。医療行為によって稀に起こる薬害が、たまたま不運に見舞われた少数の被害者に過重な負担となってのしかかるよりは、あらかじめその危険を見越して全員が少しずつお金を出す方が望ましい社会のあり方だと考えます。 このような制度の整備は、例えば「治療記録のない薬害(疑惑)肝炎」や「輸血によるウイルス性肝炎」などにも救いの手をさしのべます。これらの肝炎が救済対象となることを政府は頑なに拒みましたが、それは治療記録が明らかな薬害肝炎に比べて負担が軽いわけでは決してなく、これらの被害者にも同様の公的支援がなされるべきだと考えます。 僕の提案する制度は、このような予期せぬ副作用に、裁判の負担を追わず、政府の過失を議論することなく、早急に、公的支援を行う途をつくります。 言うまでもないことですが、今回の薬害肝炎に関して、医療行政の反省と再発防止がきちんと行われることを僕も強く望んでいます。以上で述べた議論は、あくまでこの点が十分に行われた上での話でした。 政府は今後の法整備の中で、自らが負う責任の内容についても検討するようです。 『肝炎議員立法、来月7日に法案提出へ 自公両党』 朝日新聞 2007.12.25 (Web魚拓) 「道義的責任」「解決責任」「救済責任」国民の意識からはかけ離れた多様な政治用語ですが、一律救済が実現されるならば、次に重要な実質的議論は「再発防止責任」です。 いったい薬害肝炎はどの時点から予測でき、どこまでの被害が防止しえたものだったのか? その時点で必要な対策が取られなかったのは誰(どの時期にどの役職にあったどの個人)の責任で、それを許した行政機構の「組織としての不備」は何だったのか? これらの点を明らかにすることが再発防止につながると考えます。 外国で危険性が認知されていた薬剤が、国内で回収もされずに使い続けられた責任の所在は十分に明らかになっていません。薬害被害者のリストを入手しながら通知しなかった厚労省の、「責任があるとまでは言えない」という反省も甘すぎます。大阪高裁の和解案が示した政府の「法的責任の範囲」は狭すぎます。 これらの責任追及が、一律救済が実現された後もきちんと行われるよう、僕たち国民が注目し続けなければなりません。これは、次の総選挙で僕たちの一票の行方を決める問題の一つです。 ■ この記事のトラックバック元
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| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
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薬害肝炎;首相の声がやっと、ようやく、聞こえた。――誰ももう、失望したくないよね。
この日、首相との会見に臨んだのは原告団代表の4人。…その一人の膝には、亡くなられた患者の方の遺影があった。 ...続きを見る |
週刊!Tomorrow's Way 2007/12/26 10:09 |
薬害肝炎で福田謝罪も法案作りは難航?+NHK会長選考に絡む問題+オシム
【連休からアクセスがいつもの半分近くに激減。年末年始にかけて、 さらに減少するのではとビクビクしているのですが。^^; 年末年始も どんどん政治は動いているので、お時間のある方は、是非、当ブログ& リベ平系ブログへのアクセス&ご支援をよろしくです。m(__)m】 ...続きを見る |
日本がアブナイ! 2007/12/27 15:21 |
「とにかく一律」では耳を傾けてもらえない
参りました。 m(_ _)m おっしゃる通り、人の命の重さについて考えるなら、全ての病気を持つ人に同じように配慮するべきだと思います。 ...続きを見る |
誰に投票する? 2007/12/27 19:42 |
「リスクの社会化」、救急医療では、例えばこういうこと。
「『リスクの社会化』の考え方が、不慮の事故・災害や将来の生活についての国民の不安を解消する。」 http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-539.html の記事で、「リスクの社会化」につ&... ...続きを見る |
村野瀬玲奈の秘書課広報室 2007/12/29 12:22 |
◆◆◆ 特集記事≪薬害肝炎≫ ◆◆◆
本ブログ「白鳥一声」は、ただいま≪薬害肝炎問題≫を重点的に取り上げています。以下は、この問題に関連する本ブログのエントリーをまとめたものです。 (※なお、このエントリーは随時更新されます。また特集期間の間は、このエントリーは常に新着記事リストの最上部に表示されます) ...続きを見る |
白鳥一声 2008/01/13 16:33 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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参りました。 m(_ _)m |
アイスゆず 2007/12/27 19:45 |
恐縮ですm(_ _)m |
birds-eye 2007/12/27 23:18 |
初めて書き込ませて戴きます。 |
shane 2007/12/29 17:38 |
shaneさん、コメントありがとうございます。お返事が年を越してしまい申し訳ありません。 |
birds-eye 2008/01/02 23:38 |
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